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オタク研究の大家・吉田正高氏の急逝を悼んで…OVAとインディーズメタルの歴史を振り返る

OVAの金字塔『バブルガムクライシス』が遺した功績

OVAの金字塔『バブルガムクライシス』(1987年〜1991年)。続編OVA『バブルガム・クラッシュ!』や、リメイク作のTVアニメ『バブルガムクライシス TOKYO 2040』ほか派生作品も多い。

 男性歌手の方も見てみよう。ANTHEMのヴォーカリストで、のちにアニメタルでブレイクする坂本英三は、『力王』、『黄龍の耳』、『俺の空(三四郎編)』、『孔雀王』など、複数のOVAおよびアニメのイメージ・アルバムで歌っている。また、高崎と樋口と同じバンドのヴォーカリストだった影山ヒロノブは、OVA『装鬼兵M.D.ガイスト』の主題歌を任された。そして高崎と樋口の高校の後輩で、メタル・ソロシンガーの片山圭司は、OVA『バブルガムクライシス』1巻のエンディング(ED)テーマを歌っている。  『バブルガムクライシス』は8巻まで制作され、OVAシーンのなかでも重要な作品だが、アニソンや歌謡曲シーンでも面白い位置にある。同作は、アイドル歌手が物語の鍵となった『メガゾーン23』の後継作であり、主人公はロック・シンガーという設定。ここに、アイドルからロックへと進化していることが見て取れる。そういえば、『メガゾーン23』の続編である同PART IIでも、SLAYER、W.A.S.P.、炎(『BURRN!』)などの、ヘヴィメタル・バンドや雑誌名が散らばっていた。  主人公の声優と3巻までの主題歌を担当した大森絹子は、のちに『絶対無敵ライジンオー』などのロボットものTVアニメの主題歌を歌っている。彼女は、ミミ・ルミ・クミ3人組子どもアイドル(現在ならばチャイドルと称すのだろう)=ミルクのクミとしてデビューした。そしてルミはなんと、去年話題となったバブリーダンスに使われた「ダンシング・ヒーロー」の歌手=荻野目洋子だ。  そして4~6巻の主題歌を歌った坪倉唯子は、のちにNHK紅白歌合戦にも出場したTVアニメ『ちびまる子ちゃん』の1stEDテーマ「おどるポンポコリン」のB.B.クィーンズのシンガーである。  また、OVA『バブルガムクライシス』の声優で構成されたユニット=ナイトセイバーズは、女性声優アイドルユニットとしては原初の存在ではないだろうか。男女混成であれば、TVアニメ『超獣機神ダンクーガ』の声優で構成されたユニット=獣戦機隊がすでに活動していたのだが。
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「メカと美少女」という鉄板の組み合わせ
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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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