更新日:2022年12月28日 18:20
エンタメ

西城秀樹は洋楽ロックもメタルもアニソンも歌った! 日本歌謡界の地平を開いた功績をたどる

数々の洋楽ロック&メタルのカヴァー曲を発表

 ヒデキは、1974年に2枚の洋楽カヴァー・アルバム『秀樹!エキサイティング・ポップス』『西城秀樹ロックの世界』を発表しており、またライヴ・アルバムにも洋楽カヴァー曲が収録されている。メタル系の楽曲は、リッチー・ブラックモア率いるRAINBOWの「All Night Long」「Lost In Hollywood」「I Surrender」などを歌っていた。いやこれらの楽曲、ヒデキのファンは知らないだろう(笑)。  特筆すべきは45枚目のシングル「ナイトゲーム」(1983年6月1日)だ。本楽曲は、グラハム・ボネットのソロ・アルバム『LINE-UP』(邦題『孤独のナイト・ゲームス』)に収録されている「Night Games」(1981年)のカヴァー曲である。

グラハム・ボネットの名曲「Night Games」(1981年)をカヴァーした歌謡メタル曲「ナイトゲーム」(1983年)

 グラハムは、前述のRAINBOWや、イングヴェイ・マルムスティーンが一時期在籍したALCATRAZZ、クリス・インペリテリ率いるIMPELLITTERIなど、様式系ギタリストと非常に縁が深いヴォーカリストでもある。  「Night Games」はポップなメタルであるが、秀樹ヴァージョンは、テンポが原曲よりも速く、日本語歌唱が乗っていることで、アニソンの色が非常に濃い。問答無用でカッコイイ!  この頃、洋楽ロックを演ろうとデビューしたのに、アイドル活動を強いられたバンド=LAZYが「ヘヴィメタル宣言」を行なって、日本初のヘヴィメタル・アルバム『宇宙船地球号』を発表するわけだが、これはまた別の話。それにしても、当時は自由な時代だったんだなぁ……。

「歌謡ヘヴィ・メタルがあったっていいじゃない」

「プロでも音楽理論を知ったかぶりするような評論家的なヤツらがいたんだけど、そういうヤツに限って、例えばロック系ならポップスを全然聴いてなかったりしてね。本質を知らないんだよ。僕はポップスもロックも一緒だと思ってる。歌謡ロックや歌謡ポップス、歌謡ヘヴィ・メタルがあったっていいじゃない」(西城秀樹インタビュー『ヘドバンVol.3』シンコーミュージック・エンタテイメント、2014年)。  ヒデキは、ロックとポップスに溝があること、別々に論ずることについて批判的なスタンスだが、筆者もこれに賛同する立場だ。ただし筆者はここに、メタルや歌謡曲、アニソンも加えたい。日本の音楽メディアおよびジャーナリズムは、オタクコミュニティと断絶している。しかし近年は、オタクコンテンツの海外進出が目立っており、一部アーティストもこの流れに注意を払っているが、多くの音楽メディアはオタクコミュニティのことを理解しようとしていない。市場および世の中の流れについて来れていないのである。
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  長らくジャパニーズメタルは、洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 国内では無視され、メタル・カーストでも最下層に押し込められてきた。メディアでは語られてこなかった暗黒の時代から現在の世界的ブームまでを論じる、初のジャパメタ文化論。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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