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「安倍内閣を倒す方法」を枝野立憲民主党代表に教えたい<倉山満>

 来年改選の参議院議員は5年前の自民党が大勝利した選挙で当選した議員たちだ。自民党は、よほどのことがない限り現状維持も厳しいのだ。そこへ安倍内閣が国民を敵に回す政策を2つも掲げたら? 野党は、国民を敵に回さなければ、勝てる。  ここで安倍内閣が長期化した理由を振り返る。「日銀が金融緩和をする↓株価が上がる→支持率が上がる→選挙に勝てる→誰も引きずりおろせない」である。ただし、この勝利の方程式は、消費増税の悪影響が金融緩和の効果を上回った場合に、崩れる。8%増税のときがそうだった。だから安倍首相はかたくなに10%増税を延期してきた。しかし、それも忘れたのか、着々と10%増税の準備を推し進め、もはや自民党内では増税反対の声を上げられなくなった。そして、議員たちは条件闘争に終始している。「軽減税率の拡大を」「財政出動を」などと。  経済こそが、安倍内閣の生命線なのだ。ここを突けば、安倍内閣は一瞬で崩れる。自民党が増税を進める以上、野党が増税反対を掲げれば勝てなければ道理に合わない。  これを理解している野党議員が自由党の山本太郎参議院議員で、最近は「アベノミクスは生ぬるい。もっと金融緩和をすべきではないか」と主張している。正しい。  アベノミクスはリフレ派と言われるエコノミストたちが唱えていたが、その中でも松尾匡立命館大学教授は異色だ。自分も唱えていた景気回復策を、右派の安倍首相が権力維持に使われるのに不満を爆発させている、左派を自任する経済学者だ。  枝野氏は、来年夏の参議院選挙に、松尾教授の理論を軸に公約を作ればいい。そして「増税反対」「むしろ減税」「金融緩和の徹底」に賛成の野党を結集すればよい。

本質からずれた批判ばかりするから安倍内閣が何をしても許されるのでは?

 今までなぜ野党は負けっぱなしで、安倍内閣に多くの白星を献上し続けたのか。理由を一言でまとめれば「勝つ気がなかった」となる。それを組織論で言うと、野党の支持母体の連合に勝つ気がなかったからだ。  連合は労働組合の集まりだが、アベノミクスが続く限り労働者の賃金は上がり続ける。無理に倒閣に走る必要もない。だが、肝心の経済を安倍内閣自身が破壊するとしたら……。  安倍自民党の甚だしい勘違いは二つ。一つは、「もう消費増税してもよいほど、景気は回復している」との思い込みだ。これは、もはや自己催眠と評してよいかもしれない。安倍内閣は「2年で景気回復」「経済成長率を2%に」と掲げたが、6年目になっても1%すら怪しい。これのどこが景気回復なのか。  もう一つ。安倍自民党が掲げる改憲案を保守だと思われては困る。あんなものは単なる日本国憲法の条文いじりだからだ。  マトモな野党が無いのが日本の悲劇だ。野党が本質からずれた批判ばかりするから、安倍内閣が何をやっても許されるのではないか。  もうお遊びはやめにして、本気で倒閣を考えたらどうか。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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