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安倍政権が取り組みに力をいれる“二つの北”とは?/江崎道朗

国際条約を破る常習犯である二つの「北」

 発言の真偽のほどはわからないが、言われてみれば確かに安倍政権は、二つの「北」に懸命に取り組んでいる。  まず北朝鮮については、安倍政権は官邸主導で秘密交渉を進めている。  北朝鮮がこれまで生き延びてきたのは、背後で中国が支援していたからだ。よって、中国を締め上げることで北朝鮮から譲歩を勝ち取ろうというのがトランプ政権の基本戦略だ。この戦略は確実に効果を上げていて、北朝鮮から拉致被害者の奪還を勝ち取るチャンスを迎えているのは確かだ。  北方領土問題についても熱心だ。安倍首相は11月14日、シンガポールでのプーチン大統領との会談で1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意し、これまでの四島返還から二島先行返還論へと舵を切った。さらに12月1日午後(日本時間2日未明)、訪問先のブエノスアイレスでもプーチン大統領と会談し、両国の外相を責任者とする新たな枠組みを設け、平和条約交渉を議論していくことを決定した。  安倍首相の意気込みは支持する。  だが、北朝鮮もロシアも、国民の生活より軍拡を優先する「軍国主義」国家で、まともな民主主義国家ではない。しかも両国とも国際条約を破る「常習犯」だ。これまで日本は両国に何度、騙されてきたことか。  首尾よく外交交渉が進んで合意を勝ち得たとしても、その合意を「軍国主義」国家に守らせるだけの強制力、つまり約束を守らなかった相手国への軍事的経済的制裁を実施する力が今の日本にあるのか。約束を反故にされ、騙される悲哀を味わうことはもうご免被りたいものだ。
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
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