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「自己啓発本なんか読んでもムダ」は本当か?

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第116回 読書

自己啓発本に何を求めている?

「自己啓発書は役に立たない」「無意味だ」という話があります。単にそうした話を聞いただけでなく、実際に「何冊読んでも何も変わらなかった」という経験をした人もいると思いますが、そもそも「自己啓発書が役に立った」と言えるのは、どういう状態なのでしょうか。 「自己啓発書の著者と同じ状態になる」といのはいくらなんでも高望みです。松下幸之助の本を読んだからといって、それだけで松下幸之助のようになれるわけがありません。これは自己啓発書に限らず、書籍一般に言えることです。  料理本を読んで、その本の著者と全く同じ料理が作れるようになるのか。ダイエット本を読んで、その本の著者と全く同じ体型になれるのか。一冊の本に誰もそこまで求めているわけではないでしょう。にもかかわらず自己啓発書にだけ、それを求めるというのはアンフェアです。書籍というのはあくまでもヒントにすぎません。  自己啓発のテーマはその名の通り、「自分に気づくこと」です。そして自己啓発書を役立てるとは、「他人が自分に気づいた過程を、自分が自分に気づくためのヒントにするということ」です。そのためには、「著者に対する共感」が必要になります。  著者が苦境や逆境に立たされた時に、感じたこと、思ったこと、考えたこと。そういった実際の行動や取り組み以前の、心の段階に寄り添うことで自分に浮かんでくる感情こそ、自己啓発として汲み取れる学びです。

私が打ちのめされた自己啓発書

 私は七年前に『TQ―心の安らぎを発見する時間管理の探究』(キングベアー出版)という自己啓発書を読みました。その本に書かれていた著者とスラム街の青年の対話に心を揺さぶられ、「こんなやり方、考え方、生き方があるのか」「自分は今まで何をしてきたんだろう」と打ちのめされました。  その読書体験が相手の悩みに寄り添うコンサルタントになるきっかけになり、さらにそのコンサルタントを通して培ったノウハウをまとめて、自分自身が書籍を出すことにもなりました。私は確かに自己啓発書を役立てることができたのです。  それができたのも読書の根底に理解ではなく、共感があったからです。頭で「なるほど」と納得しても、結局は長続きしません。長続きするのは、心が震えた時だけです。感動がなければ行動もありません。  かくいう私もその本を読むまでは、自己啓発書に「こうすればうまくいく」という理屈を求めていました。共感をベースにして自己啓発書を読むことは、あまり知られていないのが実情です。 「どうすればうまくいくのか」という理屈を求めて読むと、共感や心情といった人間的な部分がないがしろになります。「著者の自分語りがウザい」という意見はその象徴ですが、自己啓発書には著者の自分語りに耳を傾けることで、読者に自分に気づかせる仕組みがあるのです。  もしあなたが「こうすればうまくいく」という理屈を求めて、いくら自己啓発書を読んでも何も変わらないことに疲れたら、今度は誰にでも当てはまる理屈ではなく、著者の体験談とその時の心情に注目して読んでみてください。人間は心構えが変われば、全く違ったものが見えてきます。きっと今まで気づかなかった発見があり、その先で「役に立った」という実感が得られると思います。 佐々木
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中

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