更新日:2023年05月23日 17:02
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ネットカフェ難民、マック難民はなぜ生まれる?低所得者の住宅事情

弱者を食い物にする悪徳ビジネスは多い

藤田:生活保護費を搾取して住まわせる無料低額宿泊所も看過できる問題ではありません。ホームレスやネットカフェで生活するような住宅難民は、業者にとって格好のターゲット。「ご飯も出て、住めるところがある」などと言葉巧みに声をかけ、役所で生活保護を申請して施設に入所させます。そして、施設関係者立ち合いのもと、銀行で口座をつくらせ、暗証番号は入居者共通で設定。銀行印と通帳は施設側に預けるといえば聞こえはいいですが、実際には奪われたも同然です。
[年収100万円ハウス]の惨状

藤田孝典氏「生活保護費を搾取する無料定額宿泊所も看過できません」

吉川:部屋はどうなっているんですか? 藤田:部屋は薄いベニア板などで仕切られた広さ3畳ほどのスペースで衛生的とは言い難く、布団にはひどい痛みや痒みを与える南京虫がすみ着いている。食事にしてもカップ麺やレトルト食品ばかりで栄養のバランスなんて最初から考えられていません。当然、体調を崩す人も多いですし、糖尿病などの持病を抱えている人は症状をさらに悪化させることになります。こうした劣悪な環境の中で、入居者に渡されるお金は一日500円の小遣いだけ。生活保護費として支給される約12万円はあらゆる名目で搾取され、彼らのもとにはほとんど残りません。これは以前、埼玉県に実在した元暴力団関係者が関わっていた施設のケースです。ほかの悪徳施設も大差はないはずです。 吉川:搾取などで貧困に陥ってしまった人に対して、「ダマされるのが悪い」と言う人もいますが、実際に知識不足はあると思います。育った環境の影響なのか検索スキルもなく情報の取り方が偏っていて、結果的に情報弱者になってしまうケースもあります。 藤田:確かに……。その情報が正しいかを確認せず、「先輩がそう話していた」「テレビで言っていた」という理由で妄信してしまう人は多いかもしれませんね。
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吉川ばんび氏「自分だけでなく周りも貧しいとその環境に疑問を抱かなくなる」

吉川:あと、生まれてからずっと貧しい環境の中で暮らしていた人にとっては、劣悪な住宅環境が普通というケースもあります。終戦直後のバラックのようなボロ家でも、住み続けるうちに慣れるように。しかも、こうした家は一般の住宅地にポツンとあるわけでなく、同じような家が数十軒やそれ以上集まっている場合がほとんどです。だけど、周りもみんな貧しいので比較されずに済む。居心地がいいと感じてしまうので地元を離れようとしません。だから、現状から抜け出したいという方向に意識が行かない。 藤田:ネットカフェ難民もそうですよね。個室の中だけは自由な空間。そして一応は日雇いで働いているし、漠然と“周りにも似たような人がいるから……”と抜け出せなくなるんですよ。
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非正規雇用の人は住まいの貧困の予備軍
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年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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