更新日:2023年05月23日 17:02
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ネットカフェ難民、マック難民はなぜ生まれる?低所得者の住宅事情

非正規雇用の人は住まいの貧困の予備軍

藤田:終身雇用制が崩れたことも貧困から抜け出せない人が多い原因のひとつになっています。現在、実家暮らしの非正規雇用の労働者は非常に多く、一人暮らしをしている場合はそのほとんどがギリギリの生活です。いわば潜在的な貧困者といえますが、当人たちは厳しい状況になってもまだ大丈夫だと思い込んでいる。それにプライドの高さが災いして行政や支援団体に頼れない人も大勢います。 吉川:「お金がない=恥ずかしい」と考えているのか相談に訪れてもなかなか本音を出してくれません。 藤田:餓死寸前などの極限状態にならなければ助けを求めない人も多く、なかにはそれすらもしないで餓死した人もいました。 吉川:貧困から這い上がって成功した人の半生が本になったりしていますが、そんなケースは1%以下。その話を取り上げるくらいなら残りの99%の人がちゃんと家に住むことができ、貧困から抜け出す方法を教えてほしいです。 藤田:そうですね。例えば、東京都世田谷区は保育士に限定して月8万円の家賃補助を行っています。こうした支援制度を職業を限定せずに全国で利用できるようにするべきです。海外に目を向けると、アメリカには月1万円程度で住める非営利組織運営のシェアハウスが多くありますし、ヨーロッパは国の住宅支援政策が手厚い。北欧では低所得者向けに住宅生協が格安で住居を提供しています。日本は空き家問題が社会問題化しており、貧困層の住宅対策の一環として、これを使わない手はないはずです。  貧困問題の解消に向けて、やはり住環境の整備は不可欠だが、民間だけでは限度がある。だからこそ政府には空き家の有効活用なども含め、思い切った支援策を打ち出してもらいたいものだ。 【藤田孝典氏】 社会福祉士。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。貧困地域にて夜回り訪問も行っている。『中高年ひきこもり』(扶桑社刊)など著書多数 【吉川ばんび氏】 ライター・コラムニスト。貧困や家庭内暴力のある環境で育ち、商社や司法書士事務所などを経て現職。貧困や機能不全家族、ブラック企業、社会問題について、自らの体験をもとに取材・執筆。日刊SPA!など複数のオンラインメディアに連載中。4月30日に「年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-」(扶桑社)を発表 <取材・文/週刊SPA!編集部>
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年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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