フィリピン人から学んだ、カジノでギャンブラーからカネを恵んでもらう方法
嘘だ。ここで勝てなければまた新しい日本人と仲良くならなければならないからだ。ここで勝ってもらわないと飯を食う金さえない。帰るためのコンドミニアムはあったが、カジノから徒歩で3時間以上かかる。フィリピンのタクシーだと1,000円近くかかってしまう。
2時間ほど一緒にゲームをして、結果は二人合わせて20万勝ちだった。当初はここで金をもらう予定だったが、彼らの中での僕はもうカジノのプロだったのを強く感じ、中々こちらから「金をくれ」と言い辛くなっていた。明確なビジネスの意識がないと、その一言が喉で止まる。
いつの間にか僕は、二人の「感謝の心」に賭けるしかなくなっていた。
フィリピンでの遊び方を教えながら、頭の中では「これお礼です!」と言って差し出されるチップのことしかなかった。楽しかっただろ? 勝って嬉しいだろ? クラップス、最高だったろ?
少しズルかったが、世間話の中に「フィリピンにはチップ文化がある」という話も混ぜた。この話題を彼らの頭の片隅に入れておくことで深層心理で感謝のチップを差し出すように誘導したのだ。僕はこれを「サブリミナル感謝」と名付けている。
さらに1時間ほど中身のない話をし、ようやく別れようとした。
「あの! これ! ありがとうございました! ガイドしていただいちゃって!」
4,000ペソ、8,800円だった。彼らはタクシー代はおろか、勝負銭までくれたのだ。
「僕たち二人だけならこんなに楽しめてなかったです!」
なんて優しいんだ……。
二週間ぶりに会話する日本人の温かさに触れ、思わず返しそうになってしまった。なんとかしてこの二人から金を、なんて考えていた自分が情けなく思える。
「・・・お粗末・・・!」
ホテルに帰る二人の背中を見ながら、心のハチマキを強く締めた。
5時間後、バカラで8,800円を全て溶かした僕は、足をボロボロにしながらコンドミニアムに帰り、蒸し返るような暑さの部屋の中で静かに泣いた。
〈文/犬〉
―[負け犬の遠吠え]―
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。
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