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「死にたい」とSOS。“西成の大家さん”が見た「生活保護を知らない」極貧に苦しむ人たち

若い人こそ、思い悩まず頼ってほしい

坂本慎治 アフターコロナの中、街に人は戻り活況を取り戻したように見えるが、物価はどんどん高騰しており、生活に困窮する若者も増えている。 「若い人は全体の2~3割ですが増えていると感じます。傾向としては孤独な人。なにやってもうまくいかない。仕事も続かず友達もいない、家族も頼れない。部屋を借りていても、家賃が払えず滞納を続け、住む場所を失う。こんな状況になると、友達がいるような人でも、お金借りたあげく返せないため離れていきます。やがて食べ物もなくなり、『死ぬしかない……』と追い込まれていきます」  坂本さんは彼らの悩みを聞いて「孤独じゃないよ」「いつでも相談に乗るよ」と語りかける。 「面談を重ねるほど、表情は明るくなり最後には笑えるようになります。みんな言うのが『もっと早く相談すれば良かった』ということ。思い悩む人はマジメで、まわりじゃなくて自分を責めるのです。最後の最後の生きるか、死ぬかになっても、人に頼る勇気さえあればラクになります」

「大阪にくれば何とかなる」そう思って!

坂本慎治

自著を持つ坂本さん

 マジメな人ほど追い込まれる現実に、坂本さんは疑問を投げかける。 「たとえば月に数万円しか稼げず、生活保護に抵抗があり、貧乏生活を頑張っている人は地域に貢献していますか? 生活保護受けて、その地域でお金を使えば消費が増えて、結果的に新たな雇用の継続につながるかもしれない。少なくとも消費は地域活性につながります」  また、社会復帰することを目標にする人は多いが、社会復帰する人だけが偉いわけではない。生き伸びることが偉いのだと坂本さんは続ける。 「生活保護はいけないことではなくて、極貧生活に疲弊して命を絶つことのほうがいけないのです。今は順調でも健康を失う可能性、職を失う可能性は誰にだってあること。相談の電話は月250件ほど。そのうち30~50人が大阪までやってくる。大阪にくれば何とかなる……そう思って、頼ってきてください!」  このメッセージが必要な人に届くことを願って、坂本さんは今日も活動を続ける。 <取材・文/山本ゆりえ> 【坂本慎治】NPO法人生活支援機構ALL」代表理事。大阪居住支援ネットワーク協議会代表理事。株式会社ロキ代表取締役。1988年生まれ、大阪府出身。中学卒業後、鳶職を経て某大手賃貸仲介業者へ就職。入社後まもなくNo.1セールスマンに輝く。その後、売買・収益・管理案件とさまざまな仕事をこなしながら、一方で生活保護者や障がい者を受け入れない大家に疑問を抱き、25歳の時にNPO法人生活支援機構ALLを立ち上げる。著書に『大阪に来たらええやん! 西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)がある
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