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ピース又吉の芥川賞受賞に見る編集者の重要性【コラムニスト・木村和久】

― 木村和久の「オヤ充のススメ」その79 ―


 お笑い芸人・ピース又吉直樹さんの芥川賞受賞は、低迷する純文学、そして出版界全体のカンフル剤として、大いに貢献していると思うが、それにしてもノミネート1回目での受賞は、びっくりしたなもう。受賞の影には31歳の美人編集者、浅井さんの存在が欠かせないといわれている。2011年、今から4年前に又吉さんと遭遇し、そこから浅井さんが口説きまくって、渋る又吉さんを説得し、難産のすえに生まれた作品が「火花」である。

 編集者に口説かれるって、新人は滅多にあることじゃない。しかも、ちゃんとした目利きができる編集者に口説かれるって、奇跡に近い。現在ブログやSNSが活況で、一億総ライター化になり、新人賞の応募は凄く増えているし、出版社への持ち込みも増加の一途だ。ところが実際は、新人が書いた作品を、知り合いを頼って、編集者に見せても、全部は読んでくれない。2~3枚読んで、ダメと思ったら終了~、その後、連絡はない。編集者側にしてみれば、毎日そんなに持ち込まれてもって感じだろうか、読む時間がないのだ。

 だから逆に新人賞に応募して、受賞した人間は非常に生命力が強いといえる。才能も必要だが、運も味方にしないと。都市伝説では、ある作家が新人時代に、作品を応募したが、一次審査も通らなかった。頭に来たその作家は、同じものを次々にいろんな賞に応募したら(本来、同一作品の重複応募は出来ません)、何回目かの新人賞で見事受賞したって話だ。いかに審査がザルかってことなのか? まあ選考基準が違うって、ことなんでしょう。あくまで都市伝説ですからね、この話は。

 編集者に恵まれて有益なアドバイスを貰い、立派な作品に仕上げた又吉さんだが、彼の才能は、すでに充分有り余っていた。又吉さんの凄いのは、有名作家をとことん読み込み、それを自分なりに解釈して、アレンジする能力に長けていることだ。太宰治の「人間失格」を、100回読んだエピソードには恐れ入る。こっちも10回は読んでいるけど100回はね「それしか本持ってねえのかよ」って、綾部に突っ込んでもらいたいくらいだ。

 何を隠そう、私は6月19日生まれだ。その意味分かります? 太宰治と誕生日が一緒なのだ。子供心に、同じ誕生日の有名人は誰かって探すでしょう。その頃から太宰治にどっぷりはまり、斜陽館にも行ったし、太宰の墓参りも幾度となくした。太宰治のお嬢さんに会ったときは、ロバート・デニーロに会ったときより、100倍嬉しかった。でもね、私は単に好きなだけであって、ファンの域を越えてない。ところが又吉さんは、ファンを飛び越え、文芸評論家並みに太宰を読み込んでいる。一度NHKの太宰特集で又吉さんが登場したけど、ほかの文芸系のゲストより、鋭いことを連発していた。あれを見ても、この人は書けるんじゃないかって、思えたもの。

 そう考えると書ける新人を探していた浅井さんと、書けるよと、そこはかとなく信号を出していた又吉さんとの出会いは、必然だったと思える。ゆっくり2作目を待つとしようか。

 蛇足だが、個人的に今まで編集者に恵まれたことが2度ある。ふたりの編集者が私を売ってくれて、見事ベストセラーになった。そして今年、3度目の編集者との出会いがあった。

89ビジョン、とにかく80台で回るゴルフ 7月24日に、集英社から「89ビジョン、とにかく80台で回るゴルフ」というのを上梓する。これはゴルフダイジェストの人気連載をまとめたものだが、連載当時から面白いと言ってくれていたTさんに感謝だ。Tさんの紹介で実務をしてくれたUさんと出会う。Uさんと原稿のやりとりをするのがまた楽しい。想像以上のことを出してくるから、またそれに応えるべく、こちらも頑張らざるおえない。10年に1回のいい仕事だった。

木村和久

木村和久

 もし気になったら、本屋で立ち読みでもしてくだされ。ちなみにイラストは超売れっ子漫画家の福本伸行さんだ。

■木村和久(きむらかずひさ)■
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦

89ビジョン、とにかく80台で回るゴルフ

誰でもすぐできる実戦的なスキルのオンパレード




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