ピース又吉の芥川賞受賞に見る編集者の重要性【コラムニスト・木村和久】
―[木村和久の「オヤ充のススメ」]―
― 木村和久の「オヤ充のススメ」その79 ―
編集者に口説かれるって、新人は滅多にあることじゃない。しかも、ちゃんとした目利きができる編集者に口説かれるって、奇跡に近い。現在ブログやSNSが活況で、一億総ライター化になり、新人賞の応募は凄く増えているし、出版社への持ち込みも増加の一途だ。ところが実際は、新人が書いた作品を、知り合いを頼って、編集者に見せても、全部は読んでくれない。2~3枚読んで、ダメと思ったら終了~、その後、連絡はない。編集者側にしてみれば、毎日そんなに持ち込まれてもって感じだろうか、読む時間がないのだ。 だから逆に新人賞に応募して、受賞した人間は非常に生命力が強いといえる。才能も必要だが、運も味方にしないと。都市伝説では、ある作家が新人時代に、作品を応募したが、一次審査も通らなかった。頭に来たその作家は、同じものを次々にいろんな賞に応募したら(本来、同一作品の重複応募は出来ません)、何回目かの新人賞で見事受賞したって話だ。いかに審査がザルかってことなのか? まあ選考基準が違うって、ことなんでしょう。あくまで都市伝説ですからね、この話は。 編集者に恵まれて有益なアドバイスを貰い、立派な作品に仕上げた又吉さんだが、彼の才能は、すでに充分有り余っていた。又吉さんの凄いのは、有名作家をとことん読み込み、それを自分なりに解釈して、アレンジする能力に長けていることだ。太宰治の「人間失格」を、100回読んだエピソードには恐れ入る。こっちも10回は読んでいるけど100回はね「それしか本持ってねえのかよ」って、綾部に突っ込んでもらいたいくらいだ。 何を隠そう、私は6月19日生まれだ。その意味分かります? 太宰治と誕生日が一緒なのだ。子供心に、同じ誕生日の有名人は誰かって探すでしょう。その頃から太宰治にどっぷりはまり、斜陽館にも行ったし、太宰の墓参りも幾度となくした。太宰治のお嬢さんに会ったときは、ロバート・デニーロに会ったときより、100倍嬉しかった。でもね、私は単に好きなだけであって、ファンの域を越えてない。ところが又吉さんは、ファンを飛び越え、文芸評論家並みに太宰を読み込んでいる。一度NHKの太宰特集で又吉さんが登場したけど、ほかの文芸系のゲストより、鋭いことを連発していた。あれを見ても、この人は書けるんじゃないかって、思えたもの。 そう考えると書ける新人を探していた浅井さんと、書けるよと、そこはかとなく信号を出していた又吉さんとの出会いは、必然だったと思える。ゆっくり2作目を待つとしようか。 蛇足だが、個人的に今まで編集者に恵まれたことが2度ある。ふたりの編集者が私を売ってくれて、見事ベストセラーになった。そして今年、3度目の編集者との出会いがあった。 7月24日に、集英社から「89ビジョン、とにかく80台で回るゴルフ」というのを上梓する。これはゴルフダイジェストの人気連載をまとめたものだが、連載当時から面白いと言ってくれていたTさんに感謝だ。Tさんの紹介で実務をしてくれたUさんと出会う。Uさんと原稿のやりとりをするのがまた楽しい。想像以上のことを出してくるから、またそれに応えるべく、こちらも頑張らざるおえない。10年に1回のいい仕事だった。 もし気になったら、本屋で立ち読みでもしてくだされ。ちなみにイラストは超売れっ子漫画家の福本伸行さんだ。 ■木村和久(きむらかずひさ)■ トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦。著書に『50歳からのかろやか人生』
『89ビジョン、とにかく80台で回るゴルフ』 誰でもすぐできる実戦的なスキルのオンパレード |
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