芥川賞作家・又吉直樹が相方・綾部に思いを馳せる「太って、髪の毛が薄くなって帰ってきてもありがたい」
多才な人である。芸人と小説家という二足のわらじを履き、そのどちらでも成功を収めた男、又吉直樹。今年5月に上梓した芥川賞受賞後第1作となる長編小説『劇場』はまたもやベストセラーに。さらに相方の綾部が成功を夢見て渡米したかと思えば、9月には単独ライブを開催するなど、今、エンタメ界を最もざわつかせる男である。そんな異能の芸人による異色の才能論に迫った
――まずは、綾部さんのアメリカ行きについて。コンビ間で具体的なやりとりが事前にあったのですか?
又吉:バラエティ番組で「アメリカに行きたい」と、あいつが言ってる言葉の温度感っていうんですかね。ふざけてる感じやけど、どうもこれはほんまに行ってみたいんやろうなぁというのは、なんかわかっていたんです。長い付き合いですから。それで昨年、楽屋でふたりだけの時に「ホンマに行きたいんやったら、東京オリンピック前でも別に大丈夫やで」とは言いました。綾部はけっこうビックリしてましたけどね。「え! いいの?」みたいな(笑)。
――なぜ、東京オリンピック前と区切ったのですか?
又吉:ああ見えて、彼は責任というものに厳しいんです。あるコンビが、一方の結婚を理由に解散したりすると、「あいつ、相方のことを考えてんのかな?」とかけっこう言うんですよ。だから僕、綾部は東京オリンピックという大きなイベントが終わって、ピースとしての責任を果たしてからアメリカに行こうとしてるんじゃないかなぁと感じてて。でも、新しいことを形にするのには10年ぐらいかかるとも勝手に思ってて、だったら早いほうがいい。それでも僕は、綾部は2~3年後に行くのかと思っていたんですけど、「来年行きたい」と、その1か月後に突然言い始めて。今度は僕が「えっ!」ってビックリさせられました(笑)。
――一時帰国の噂など綾部さんの動向には目が離せませんが、もし本格的な渡米後にホームシックになって電話してきたら、どんな話を?
又吉:タイミングにもよりますけど、1年とかだったら「早ない? 今帰ってきたらお前がしんどくなんで」ですね。まぁ、本当にハリウッドスターになって帰ってきたら面白いですけど、向こうの仕事が全然ダメで、食事も合わなくてぶっくぶくに太って、ちょっと髪の毛が薄くなって帰ってきても、僕としてはありがたいですけどね(笑)。
※このインタビューは7/25発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
【又吉直樹】
’80年、大阪府寝屋川市生まれ。’99年、吉本興業の養成所「NSC東京校」に入学。’03年、綾部祐二とお笑いコンビ・ピースを結成。’15年デビュー長編『火花』で第153回芥川賞受賞。著書に『劇場』、『夜を乗り越える』、『第2図書係補佐』、『東京百景』などがある
取材・文/唐澤和也 撮影/尾藤能暢 撮影協力/ロイヤルパークホテル ザ 汐留(www.rph-the.co.jp/shiodome/)
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『劇場』 『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。 |
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