更新日:2017年11月16日 19:38
ライフ

ハロウィンはなぜ流行る? 芸大生気分を味わえる祭典だから!?【コラムニスト原田まりる】

 コラムニスト原田まりるが、ネットに賛否分かれる事象について、実際に体を張って理解してお伝えする。初回は、ハロウィン。賛成派、反対派、今年ほど激論を繰り広げた年はなかったはずだ。それだけ年々盛り上がりを見せている――。  ある日、WEBサイトの編集者Kさんから「10月30日、ハロウィンパーティーが開催されるよっ」というお誘いメールが来ていたので、これは気合入れねばと、この日のために一ヶ月前に通販で購入していた中古のウエディングドレスに血糊をぶっかけ、顔中に深傷をおもわすタトゥーシールを貼りつけた。SPA!編集者のOさんも誘い、渋谷の雑居ビルの一室で開かれている「ハロウィンパーティー」へ向かった。
原田まりる、渋谷ハロウィン取材レポ

こちらが私の仮装です

 ちなみに私とOさんはパーティーピープルでもなんでもない。どちらかというとこういった乱痴気イベントを斜に構えて眺め、バカにする類のタイプだ。  しかし、それは一ヶ月前までの話である。一ヶ月前にハロウィンに取材にいこう!と決めた日から私たちの心境は大きく変わったのだ。 「衣装どうしよう」「ここをもっと変えたほうが良くなるんじゃないか?」とどんな仮装をするかについて試行錯誤するうちに、仮装を成功させたい!という気持ちがどんどん膨らんできたのだ。この気持ちは「学祭とかしょうもねーよ!」と荒んでいた不良少年が、クラスメイトと接していくなかでいつしか「学園祭を成功させたい!」と胸に誓う……という感覚に似ていた。  絶対……絶対仮装を成功させるぞ! 青臭い情熱を燃やし、ハロウィンパーティーへ向かった私たちだったが、ここで私たちの熱意を裏切る、予想外の出来事が起きた。  なんと日本全国で屈指の盛り上がりをみせるハロウィンタウン・渋谷で開催されているパーティーにもかかわらず、仮装してる人間が誰も見当たらない! 会場にいた男性はみなごくごくシンプルな普段着で缶ビールを片手に和気あいあいと談笑しているではないか。見事に浮く我々2人。 「これではせっかくの仮装が報われない!」。そしてその思いは、DVを受けて家から飛び出してきたような、“殴られメイク”をほどこしたOさんの胸にも芽生えていたようだった。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=974736
原田まりる、渋谷ハロウィン取材レポ

Oさんと。本人いわくゾンビメイクだが、たしかに殴られた人だ

「まりるさん……ちょっと満足いかないですね、せっかくの仮装が……」  Oさんは県大会にすら出られなかった高校球児のように、あまりの悔しさに肩を震わせ、そう呟いた。私とOさんは懇親会を後にし、渋谷センター街へ向かった。 ◆2日間のハロウィン現場に挑んだ結果  なんと我々は、30、31日とハロウィン現場に挑むことになった。盛り上がりを見せているという渋谷センター街と、六本木だ。  まず、渋谷センター街。そこはハロウィン色に狂乱していた。言わずもがな、仮装した人で溢れかえっていたのだが、驚くべくはその仮装の精密さであった。もはや我々は埋もれている。たまに話しかけられることがあっても、通りすがりの酔っ払いに「おっ花嫁ゾンビおるやん、結婚しよ~や(笑)」とbotのように繰り返されるだけで、ただひたすら埋もれていた。
原田まりる、渋谷ハロウィン取材レポ

渋谷センター街はハロウィンイブでもしっちゃかめっちゃか

「ドンキで買ってきて取りあえず着てみた」といったようなぬるい仮装姿の人はほぼおらず、三白眼になる白いカラコンに、肉が剥き出しになったような特殊メイクのゾンビたちであふれかえっている。今年のトレンドは集団で同じ仮装をすることなのか、かなりの準備が感じられる。  中にはふなっしー風の着ぐるみを自作して、美女から「なにあれかわいい~写真とりましょ~」とモテモテの中年男性。まぐろ、たまご、いか…とそれぞれが寿司のネタになり、ランチセット程度のボリューム(八貫)でねり歩く外国人男性の集団。ティム・バートン映画のキャラクターに扮した集団などそれぞれが「これが俺のハロウィンだ」といわんばかりに高クオリティーな仮装を楽しんでいたのである。
原田まりる、渋谷ハロウィン取材レポ

ふなっしー(?)みたいな仮装と。かなりの人気で、ツーショット撮影に苦労した

 さて、翌日、31日は本場・六本木へ。昨日の敗北感を背負った我々は前日よりもちょっと気合を入れてゾンビ感をアップしてみた。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=974735
原田まりる、渋谷ハロウィン取材レポ

いかがだろうか?

原田まりる、渋谷ハロウィン取材レポ

六本木交差点と奇妙なゾンビ花嫁

 ところが、微妙に渋谷とは「仮装傾向」が違っていたことがわかる――。  渋谷は男女ともに十代~二十代の年齢層が中心で、仮装も派手に血糊をつけたグロテスクなゾンビの仮装が主流であった。かわいいバニガールやポリスの仮装をしていても、血糊べったりでゾンビメイクといった「ゾンビ仮装」が中心であった。ワンピースや名探偵コナンなどアニメの仮装をしている人物もをチラホラ見かけられた。  対して六本木は、衣装のクオリティこそ高いものの、ゾンビメイクはあまり見かけなかった。年齢層は二十代~四十代と幅広く、異常に美女率が高い。キャットウーマン仮装も、六本木にいるのは高級なクロマグロ缶しか食べない血統書付の気高いキャット、渋谷は路地裏を徘徊する病気の野良猫という具合に、仮装の傾向が街によって二分化していたのだ。挑む街によっておそらくもっとカラーがあるはずだろう。残念ながら、ゾンビ度を上げても、六本木という場所では埋もれてしまった。  中年男性は六本木の方が多いと見受けられ、ガチムチな胸筋を惜しげもなくあらわにした結果にコミットした男性もいたのだが、意外にも女子から人気を博していたのは、着ぐるみ、被り物で仮装している中年男性たちであった。  マツコデラックスなど、被り物をして全身仮装をした中年男性の周りは美女たちがあつまり記念撮影を楽しんでいたのだ。中年男性もちゃっかり腰や肩に手を回し写真撮影に応じていた。ハロウィンの夜に仮装姿の美女からチヤホヤされるには人気のあるキャラの被り物・着ぐるみが一番効果的なようだ。若干切ない気もするが……。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=974728
原田まりる、渋谷ハロウィン取材レポ

Oさんは、マツコ軍団と撮ってみた。2日目はチャッキーを意識したらしい

◆終わってみると、なぜか後悔ばかりが残る  二日間参戦したハロウィンで、一番印象に残ったことは、ハロウィンの仮装衣装の精巧さ、ハロウィンにおける匠達の技術であった。着ぐるみはさることながら、シザーハンズの手などの小道具、LEDライトをあしらった被り物など衣装のハイクオリティーさに感動を覚えると同時に、私とOさんは自責の念にもかられていた。  それは、学園祭当日の朝に「もっと準備できたはずなのに、妥協を許したあの日の自分」への後悔だった。日本でもハロウィンは大勢で仲間意識をもって騒ぐイベントのように捉えられているが、それだけではない。心の奥底で「学園祭の準備にいそしむ芸大生」の気分になりきるという、心の仮装を楽しんでいた自分もいるのだ。  賛否両論ある日本風のハロウィン、人によって騒ぐことに着目するのか、仮装のクオリティに着目するかはさまざまだが、ひとつだけ言えることがある、ハロウィンには信じられないほどの精巧な衣装に身を纏う、職人技の匠たちが確かに存在している。そこに日本らしさを感じた。これは実際に飛び込んでみなければわからないことだった。  さらに盛り上がるであろう来年度に向けて、もっと本気で挑もうと誓ったのだ。
原田まりる、渋谷ハロウィン取材レポ

こちらが素顔です

<取材・文/原田まりる> 【プロフィール】 85年生まれ。京都市出身。コラムニスト。哲学ナビゲーター。高校時代より哲学書からさまざまな学びを得てきた。著書は、『私の体を鞭打つ言葉』(サンマーク出版)。レースクイーン、男装ユニット「風男塾」のメンバーを経て執筆業に至る。哲学、漫画、性格類型論(エニアグラム)についての執筆・講演を行う。Twitterは@HaraDA_MariRU 原田まりる オフィシャルサイト⇒ https://haradamariru.amebaownd.com/
私の体を鞭打つ言葉

突如、現れた哲学アイドル!「原田まりるの哲学カフェ」を主催する著者が放つ、抱腹絶倒の超自伝的「哲学の教え」

おすすめ記事