山田ゴメスの俺の恋を笑うな
ドラッグストアのお姉さん・完
考え得る、あらゆる仮病を捻出しては
例のドラッグストアに通い詰めていた私だが、
例の美人の薬剤師のお姉さんは、
あたかも私を避けるかのごとく、
いっこうに姿を現さない。
思い切って……、
私のなかでは本当に
ものすごい勇気を振り絞って、
レジに立つおばさん薬剤師に聞いてみた。
「あのぉ……ちょっと前にいた
ロングヘアの薬剤師のお姉さん、
最近見かけないですよね?」
なるべく
「あ、そーいえば……」
的な、フランクでさり気ない口調で
語りかけたつもりなんだが、
すでにそういう質問を何度も受けているのか、
そのおばさんはニヤッと微笑み、
「はいはい。あの子はねえ、
研修で来ただけだから
ずっとウチにいるわけじゃないのよ」
と、私が購入したトイレットペーパーに
店のロゴが入っているテープを貼り付けながら、
まるで、幼稚園児を
「サンタさんは
クリスマスの夜にしか
来てくれないのよ」
と、諭すような物腰で教えてくれた。
あっけない幕切れである。
「じゃあ、失恋につける薬はないのですか?」
そうレジのおばさんに返せるようなら
私もたいしたものだが、
もちろん、それは無理だった……。
〜Fin〜
2012.06.01 |
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