ある男と女のランチタイム

 行きつけの喫茶店で
珈琲を飲みながら
原稿を書いていると、

となりに座っている
アパレル風のお洒落な
20代前半らしきカップル
こんな会話をしていたので
思わず耳を傾けてしまった。

女「どっか、旅行とか行きたいんだよね」

男「国内? 海外?」

女「どっちでもいいんだけど……う〜ん……やっぱ、できれば海外かなぁ?」

男「韓国とか?」

女「いや、一週間くらい休み取って、もうちょっと遠く……」

男「そんな休み取れんの?」

女「がんばって取るよー」

男「じゃあハワイとかバリとかイタリアとか?」

女「う〜ん……そういうんじゃなく、いっそのことインドとか?」

男「ふ〜ん……あ、ちょっと煙草吸っていい?」

女「そうぞ」

(気持ちよく煙を吐きながら一拍間をおいて)「でもさ……○○子、絶対にインドはダメだと思うよ」

(今までランチのキッシュセットを食べながらけだるそうに話していたのが、いきなり身を乗り出して)「え! なんでなんで!?」

(興味を示した女の態度に嬉々として)「ん? なんでだと思う?」

女「なんでなんで!? はやく教えて!!」

男「教えて欲しい?」

女「教えて欲しい!」

男「どぉしよっかな……」

女「はやく教えてよ〜! アタシ、インドとか前から行ってみたかったのにー」

男「いや〜、寒くなったね。いきなり……」(わざとらしく話をそらして)

女「なにジラしてんのー?」

男「う〜ん……」

女「そもそもさあ、あんたインド行ったことあるの?」

男「いや、オレは行ったことないんだけどさ。友だちから聞いた話で……」

女「なになに?」

男「教えて欲しい?」

女「はやくはやく!」

男「いや、○○子って、カレー嫌いだろ? インドはカレーが日本の味噌汁みたいなもんだから、街中カレーの匂いでぷんぷんらしいぞ」

女「え〜! そーなんだー!!」

 さんざん
引きのばしておいて、

そんなんでいいのか!?

 それで感心しちゃう
女も女だが、
こういうのを

微笑ましい

というのだろう。

……と、思わず
溜飲を下げた
私であった。

PROFILE

山田ゴメス
山田ゴメス
1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など
『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)
『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)
OL、学生、フリーター、キャバ嬢……1000人以上のナマの声からあぶり出された、オヤジらしく「モテる」話し方のマナーとコツを教えます

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