コロナ禍が長引き、夜の街は厳しい状況が続いている。本企画の意義を改めて考えると、自分なりの恩返しという結論に至った。そんな折に、夜の街で働く女性を対象にしたミスコン「ナイトクイーングランプリ」開催の知らせが飛び込んできた。
これは、苦戦する業界の再起を促すべく日本水商売協会が主催するものだ。候補者のなかで目を引いたのが、横浜・福富町のスナックバーからエントリーした未來さん(31歳)。ええ、あの福富町……!?
横浜の歓楽街のなかでもさまざまな国籍や職業、年齢の人たちが集う、ひときわディープな人間交差点。じつは僕、この界隈の飲み屋で働いていた過去がある。まさに、「俺の夜」を語るうえで外せない街なのだ。そこで、未來さんにコロナ禍での変化や、街に寄せる思いを聞きに行ってみた!
常に「今日の一組」を大切に生きてきた
大学時代から接客業のアルバイトを経験。「ミスティーク」の雇われ店長になったのが24歳の頃だ。現在は店を買い取り、経営する立場となった未來さん。この地で働き始めて約9年になる。「福富町は横のつながりが非常に強い街です。お客さまにオススメの他店を紹介し合うような文化も根づいていて。私の店でも人と人との縁を大事にしてきました」
勝たなくてもいいからこの街で生き残りたい
店同士の行き来も盛んで、持ちつ持たれつの関係だった。しかし、コロナ禍で一時はそんな福富町の賑わいもすっかり消えてしまっていたと振り返る。
閉店する店もあるなかで、未來さんは決して諦めなかった。
「試行錯誤の連続でした。飲食のテイクアウトやオンライン営業。時短が要請されてからは、ランチ同伴にも力を入れて。他店に勝つことよりも生き残ることを第一に。とにかく、今日の一組、明日の一組を大切にしてきました」
夜の同伴とは勝手が異なるが、昼デート気分が味わえることから常連客を中心に、毎日のようにランチ同伴の予約が入ったそうだ。「お客さまにとって居心地が良く、何度でも通ってもらえる“居場所”を目指して。目先の利益は追わず、お互いに信頼できる関係をコツコツと築いてきました」
将来に悩んでいた頃夜の街に救われたから……
コロナ禍に突入しても開店当初から掲げていた信念を貫いた。「この店でストレスを発散し、明日からまた頑張ろうと思ってもらえるように努めてきたんです。『来て良かった』と言ってもらうことが、私の幸せでもあります」
一時は閑古鳥が鳴いていた街にも、少しずつ活気が戻りつつある。今年の春以降は、空きテナントに入る新店も徐々に増えている。とはいえ、本来の姿には程遠い。そんなときに、「ナイトクイーングランプリ」を知る。そして、スナックやショーパブで働く女性を対象にしたガーベラ部門に参加を決意。ちなみにガーベラの花言葉は希望だ……。コンテストを通じて「夜の街のイメージアップに貢献したい」と意気込む。
「横浜の福富町を知らない方にも街の魅力をアピールして、少しでも興味を持ってもらえる機会になれたらうれしいですね」
本戦は11月8日に迎えるという。果たして、マエザワゆかりの地から日本一の“夜の女王”は誕生するのだろうか――。
もちろん、ナイトライフの楽しみ方は人それぞれである。だが、人間関係が希薄になりつつある昨今だからこそ、義理と人情に酔いしれるのも悪くないだろう。
【ミスティーク】
住:神奈川県横浜市中区福富町東通38-5 東38番館3F-A
電:045-315-5443
営:19:30~LAST
休:不定休
料:1セット60分3000円(瓶ビール・焼酎・ウイスキーなどが飲み放題)
※延長30分ごとに1500円 テキーラショット700円、スタッフドリンク1000円ほか
※営業時間等が変更になる可能性があります。
撮影/長谷英史 取材協力/日本水商売協会
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マエザワ エロ本出版社出身、元ギャル男雑誌編集者。無類の外国人好き。趣味は「夜の国際交流」
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