更新日:2022年08月22日 02:52
ライフ

反グローバリズムを望んでいるのはアメリカ国民自身であるという事実

東日本大震災がアメリカ国民の精神革命の引金を引いた

 2011年3月11日に日本で起きた東日本大震災を、アメリカ国民はその漂流する価値観の中で見た。そして気づいた。人間が生きる中で最も大切なことは「縁」であることに。よりよい安全な暮らしのために、縁をより所としなければ、未来は見えない。  そしてアメリカ国民は、「ローカル」に縁を見出した。ローカルとは地縁のことである。故郷を作りたい、自分たちが生活をし、根を下ろす場所が欲しい。それは、あまり「地縁」ということを大事にしてこなかったアメリカ社会では画期的なことだった。  東日本大震災が起きた年に、サンフランシスコのミッション地区にあるバイライトというスーパーマーケットに行った時、次のような表記に目を奪われた。  「バイライトを使うということは、この地域をよりよくし、未来に手渡すということです。」  この小さなスーパーマーケットは、地域の人たちのことを紹介したい、この地域で売っているもの、作っているものを、地域の人に買ってもらいたい、そのような哲学に溢れていた。バイライトは今や超繫盛店になっている。なるほど、ローカリズムというのは、このような形で表出してくるのだ、と思ったものだ。

「利益的結合」から「同志的結合」へ

 さらに、アメリカでは「コミュニティ」という言葉も復活してきた。コミュニティというのは正に血縁である。血縁と言っても親戚一族ではない。アメリカには三世代家族が住むという発想は、なかなかない。コミュニティというのはいわば家族づくりである。家族のように共に安心して過ごせる集団が作れないか。  これは何を意味するのか。アメリカという国ですら、「利益的結合」から「同志的結合」に生き方を変えなければならないという一つの表れだと思う。アメリカでは今、「ローカル」や「コミュニティ」という旗の下に人々が集まってくる。利益で結びつく関係ではない、そんな関係から脱しなければならないのだ、次の価値があるはずだ。彼らはそう考え、「故郷」「家族」へ行き着いた。  「故郷」も「家族」も利益でつながるものではない。同志的、つまりビジョンを共有し、どんな人生を共に歩きたいか、そのビジョンによって結びつけられたものが「故郷」であり、「家族」である。利益で結びつく関係に疲れたアメリカ国民が、ビジョンあるいはこのように生きたいというライフデザイン、これを共にする人たちと一緒に生きたいと思うようになったのだ。
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反グローバリズムを望むのはアメリカ国民自身
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