更新日:2022年08月25日 09:18
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沖縄に「大東亜戦争」を評価する記念碑を建てた台湾。台湾政策が劇的に変わる【評論家・江崎道朗】

東日本大震災の追悼式典をボイコットし続けている中国

江崎道朗

江崎道朗(撮影/山川修一)

 こうした反日の声ばかりを報道するマスコミ報道を鵜呑みにしているのが、民進党だ。  2011年、東日本大震災の際、世界各国が義援金を送ってくれた。  世界の中で最も多くの義援金を送ってくれたのが、台湾であった。その額は実に200億円にのぼる。ところが、時の民主党(現在の民進党)政権は、翌2012年3月、東日本大震災1周年追悼式典に参列した台湾代表を、各国代表が座る一階の来賓席ではなく、二階の企業・団体関係者の席に座らせ、一般参列者として献花させた。  このように、外国の大事な友人に対して平気で無礼なことをするから民進党は国民から支持されないのだ。  当時、野党であった自民党は直ちに政府に抗議した。幸いなことにその年の12月の衆院選挙で自民党が勝利し、第2次安倍政権が誕生した。  安倍政権は2013年の式典で台湾代表を他国の代表と同待遇で招待した。すると、中国共産党政府は、東日本大震災の追悼式典に欠席した。「台湾代表を他国の代表と同じように扱うのはけしからん」というのだ。  中国共産党政府は「一つの中国」政策と言って、台湾は中国共産党政府のものだと勝手に宣言し、台湾を独立国家として認めないよう外国に対して要求している。このため台湾代表を他国の代表と同じ待遇で扱う安倍政権に対して抗議の意味もあって中国共産党政府は、東日本大震災の追悼式典をボイコットしているのだ。  このように中国共産党政府は一貫して台湾を「国家」として認めず、いずれ台湾を併合する意向であることを隠そうとしない。  しかも、こうした中国共産党政府による、台湾「否定」政策を容認してきたのが、歴代のアメリカ政府だ。  いまから45年前の1972年2月、リチャード・ニクソン大統領が中国を訪問し、対中政策を劇的に転換した。  それまでアメリカ政府は、台湾を正統な政権と認め、中国共産党政府を承認していなかった。だが、米ソ冷戦といって当時、アメリカは、ソ連という軍事大国と、ベトナムを始めとして世界各地で対立していた。ニクソン大統領としては、中国共産党政府を抱き込むことでソ連との冷戦を有利に進めようとしたのだ。  1972年2月28日に上海で、米中共同コミュニケを公表し、米中両国はそれまでの敵対関係に終止符をうち、国交正常化に向けて関係の緊密化に務めることになった。このときニクソン大統領は周恩来に「台湾に関しての5原則」を提示して、「中華人民共和国を唯一正当の政府として認め台湾の地位は未定であることは今後表明しない」「台湾独立を支持しない」「日本が台湾へ進出することがないようにする」「台湾問題を平和的に解決して台湾の大陸への武力奪還を支持しない」「中華人民共和国との関係正常化を求める」として台湾から「段階的に」撤退することを約束してしまった。  ニクソン政権は、ソ連との冷戦に勝つために、中国共産党政府の言い分を飲んでしまったわけだ(とはいえ、アメリカ政府は台湾関係法を制定し、台湾防衛については責任を取ろうとしている)。  以後、台湾は国連から脱退し、国際社会の一員として十分な活動をすることができないまま、不安定な状態に置かれている。
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日米中3か国の関係に変化が
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

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