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沖縄に「大東亜戦争」を評価する記念碑を建てた台湾。台湾政策が劇的に変わる【評論家・江崎道朗】

蔡英文政権、トランプ政権の出現で、日米中3か国の関係は劇的に変わり始めた

 ところが昨年11月、大統領に当選したドナルド・トランプ大統領の登場で、事態は大きく変わろうとしている。 「ロシアよりも中国のほうが脅威である」との認識を持つトランプ政権は、台湾との関係改善を進めようとしているのだ。例えば、これまでの歴代大統領は中国共産党政府に遠慮して台湾の政府幹部と話をするのを避けてきたが、トランプ大統領はいきなり台湾の蔡英文総統と電話会談を行った。中国共産党政府は「ニクソン政権以来の米中合意を破るつもりなのか」と激怒したが、トランプ政権はどこ吹く風だ。  トランプ政権の「台湾」重視政策に呼応するかのごとく、安倍政権も3月25日、赤間二郎総務副大臣を台湾に派遣した。赤間副大臣は台北市内で開かれた日本台湾交流協会が主催する催しに出席し、「日台は緊密な関係を持ったパートナー」だと挨拶した。  訪問は公務で、1972年の日中国交正常化に伴う日台の断交以降、日本の副大臣が公務で台湾を訪問したのは初めてのことだ。中国共産党政府は激怒したが、安倍政権は、中国の批判にまったく動じる気配がない。  そもそも安倍政権は、アメリカ、台湾、ASEAN諸国、インド、オーストラリアなどの海洋国家との関係を強化することで、東シナ海と南シナ海への強引な進出を図る中国共産党を牽制しようとする戦略を描いてきた。  昨年の蔡英文政権とトランプ政権の登場で、ようやくこの戦略を実現できるチャンスが巡ってきた。そう判断した安倍政権は、トランプ政権の対中政策見直し、台湾重視政策に呼応して直ちに閣僚を台湾に遣したわけだ。実に見事な外交だ。  マスコミや野党は、森友問題にばかりに注目しているが、安倍政権はトランプ政権、蔡英文政権と連動して、1972年以来の「対中配慮外交」を劇的に変えようとしている。「中国共産党政府による侵略を容認するアジア」から、「自由と平和を重視し、中国による侵略を容認しないアジア」へと、変わろうとしているのだ。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)など 取材・文・写真/江崎道朗
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
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