更新日:2022年08月30日 23:50
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天皇家に関する素朴な「3つの疑問」を日本一やさしく解説

【疑問2】なぜ天皇は、自由に行動してはいけないの?

倉山:「新儀は不吉。だから先例を探す」という、皇室論議における大原則があるからです。時代が変化して、完全な伝統墨守ができないときでも、自分の意見を主張するのではなく、ご先祖様の歴史のなかに「先例」を探し求めるわけです。「昨日と同じ今日が、明日も続けばいい」が、皇室の幸福であり伝統。いい意味で、ノンキで平和な日本だからこそ、育むことができた文化です。 ――「慣例に縛られた皇族の方々は可哀想」という声も聞こえてきますが? 倉山:そこはもう「感性」の問題です。この前もある大学生が、「なぜ先例に従わなくてはいけないんですか? 明快かつ論理的な答えを期待します」と質問をぶつけてきました。が、まず「明快かどうか」は主観的な問題ですし、「論理的か否か」についても、いったい何を基準に決めるつもりなのかと。論理というものの根源には、価値があります。その価値をどこに見出すかで、論理は変わるわけですから。 ――いわゆる「価値相対主義」的な……? 倉山:そうです。まず何らかの価値が存在しないと、その説明が論理的であるかどうかは、証明しようがないんです。例えば、フランス革命では合理性を追求し、1か月を30日、1日を10時間などで計算する「フランス革命暦」を採用しました。合理性の面では論理的だったかもしれませんが、実用性の面では案の定しっちゃかめっちゃかになりました。一方で、日本では7世紀に宗教紛争が起こりそうになったとき、仏教側に「神様というのは仏様の仮の姿だよ」と説明し、神道側にはその逆を語り、事なきを得た。日本人はストーリーの合理性よりも、「平和」という実用性を勝ち取ったわけです。 ――つまり、理屈じゃないと? 倉山:はい、だから「感性」の問題なんです。皇室廃止論者に何を言っても、結局は通じないんですよ。例えるなら、古代からの文化遺産を守ろうとする人と、「その土地を中国人に売り飛ばして、ビルを建てたほうが合理的」と主張する人が、話し合いにならないのと同じ。歴史のなかに存在する「個人の努力を超越した、人間的な努力」に価値を見出せない人に、いかなる理屈を並べてもムダなんです。

【疑問3】皇室が現代まで続いてこられた理由は何?

倉山:世界で日本の皇族だけが、途切れることなく続いた理由は……「タマタマ」です。普通なら王朝交代が起きそうなタイミングでも、その時代ごとに天皇を守ろうとする人々が現れ、現代まで存続することができた。何かひとつの理由があったわけではなく、様々な偶然が重なった結果です。それが具体的にどんな偶然の連続だったかは……ぜひ拙著『日本一やさしい天皇の講座』をお読みください! 「譲位について語るなら、せめてこれぐらいは知っておいてほしい」(倉山氏・談)との思いで書き下ろされた天皇論の入門書。125代続く歴史を俯瞰で読み解いた、『日本一やさしい天皇の講座』は、全国書店ほかで絶賛発売中。 <取材・文/ツクイヨシヒサ> 【倉山満】 1973年、香川県生まれ。憲政史研究者。著者シリーズ累計35万部を突破したベストセラー『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』『嘘だらけの日露近現代史』『嘘だらけの日英近現代史』『嘘だらけの日仏近現代史』のほか、保守入門シリーズ『保守の心得』『帝国憲法の真実』など。2017年6月、待望の新刊『日本一やさしい天皇の講座』を上梓
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日本一やさしい天皇の講座

天皇はいかにして権力を手放し立憲君主になったのか。そして今回、論点となった譲位、女系、女帝、旧皇族の皇籍復帰の是非について、すべて「先例」に基づいて答えることで、日本人として当然知っておくべき知見を集約した一冊。

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