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インドで出会った愉快な詐欺師たち――雑すぎ、目的が見えない、そもそも騙す気がない!?

「オレはカルカッタで1番のワル」

 カルカッタのサダルストリートには、今日も怪しいインド人たちが日本人を標的に詐欺を働いている。その中でもひと際怪しいのが、日本語ペラペラな自称旅行代理店の「コンシェルジュ」。 「お前日本人か? 千葉の清水公園で働いていたオレの友達が今日帰ってきたんだよ!」  東京や大阪などの大都市ではなく、千葉というなんとも絶妙なチョイス。調子に乗った日本人が「清水公園なら信じるぞ」と吹き込んだのだろうか。裏でその友達に聞いてみると、清水公園から帰ってきたのは2年前だという。ツメが甘いが、とにかく清水公園だけは外せないようだ。
インドの詐欺

サダルストリートのパラゴンホテル前

 またあるときは、「明日からネパールに行ってくるんだ。今日でお別れだな、マイフレンド」と肩を組みながら記念撮影をするコンシェルジュ。しかし次の日もその次の日も何事もなかったかのように街を闊歩するコンシェルジュ。ネパールへ行くのは5日後らしい。こいつの言っていることは全部ウソだ。カルカッタ歴が長いという日本人女性からは「あいつには気をつけろ」と忠告を受けた。関西弁がペラペラのインド人サトシ(※サダルストリート・サトシで検索してみよう)も、「あいつホンマ、悪い奴やで。あいつみたいなのがおるからおれも疑われんねん」と不快感をあらわにしていた。  そんなコンシェルジュと、ルーフトップのバーまでビールを飲みに行ったときのことだ。屋上へと上るエレベーターの中には電気や非常ストップ用などのボタンがある。そして、コンシェルジュは突然エレベーターを真っ暗にしてこう言った。 「おれはカルカッタで1番のワルなんだぜ? こんなところで2人きりになって大丈夫なのか?」
インドの詐欺

彼が「コンシェルジュ」だ!

 電気を付け「驚いたか?」と、はしゃぐコンシェルジュ。しかし、その後いくら付き合っても騙そうとする素振りは1つも見せない。コンシェルジュが詐欺師であることはほぼ間違いないのだが、全旅行者から金を巻き上げるつもりでもないようだ。 「詐欺をするならまずは日本語の勉強からだ」と、インドのあるぼったくりガイドは言っていた。しかし、そんな彼らでも、はじめから詐欺師として付き合えば、旅はもっと刺激的で楽しいものになるかも? <取材・撮影・文/國友公司>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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