更新日:2022年10月06日 00:01
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「アニソン好き」「嬢メタル好き」が恥ずかしくて人に言えなかった…失われた20年の苦い記憶【山野車輪】

女性シンガー全盛の80年代ロボットアニメ

 ところで70年代ロボットアニメの主題歌は、その多くがサビでロボット名または作品タイトル名を連呼するパターンで、歌うのは水木一郎や、ささきいさおなどの男性シンガーだった。アニソンのこのようなパターンについては、「ジャパニーズ・メタルバンドが“自身のバンドのテーマ曲”を持っているワケ――『BABYMETAL DEATH』『X』『LOUDNESS』…」を参照いただきたい。  だが、80年代のロボットアニメは、女性シンガーによる主題歌が主流となっていた。その頃のアニメオタクにとって中核を担っていたアニメは、株式会社日本サンライズ(現:株式会社サンライズ)制作の富野由悠季監督のロボットアニメ『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』『機動戦士Zガンダム』だった。  これらの主題歌はいずれも女性シンガーによるものだった。『機動戦士Zガンダム』の後期オープニングテーマ「水の星へ愛をこめて」(1985年)は、バラドル芸能人として誰でも知っている森口博子のデビュー曲だ。

機動戦士Zガンダムのオープニングテーマ、森口博子「水の星へ愛をこめて」(著者撮影)

 他にも、『超時空騎団サザンクロス』『超攻速ガルビオン』『星銃士ビスマルク』『超獣機神ダンクーガ』など、日本サンライズ作品以外のロボットアニメの主題歌も女性シンガーを起用するケースが増えており、そしてその多くがアップテンポの楽曲だったのだ。  たしかに70年代の『超電磁マシーン ボルテスV』『宇宙魔人ダイケンゴー』『未来ロボ ダルタニアス』などのロボットアニメの主題歌も、女性が唄っていた(これら3作品はいずれも堀江美都子歌唱)。だが、正直この頃は、女性が唄っていることに違和感があった。しかし筆者が中学生になった頃は、「女性シンガーによるアップテンポの楽曲でなければならない!」と思うようになっていた。  ところが80年代半ば頃からロボットアニメは減少し、またアニソンから“勇ましさ”や“勢い”がなくなっていった。『機甲戦記ドラグナー』『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』が、80年代女性ヴォーカルのロボットアニメ・ソングの末期だった。  そこで筆者は、女性シンガーによるアップテンポな楽曲を求めて、レコードやCDを聴きあさり、筆者の理想とする音楽を探した。その結果、たどり着いたのが、浜田麻里……、つまり女性ヴォーカルのヘヴィメタルだったのだ。
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メタル・クィーン浜田麻里から嬢メタルへ
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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