恋愛・結婚

男子高校生の性転換手術を追った映画『女になる』を女装小説家はどう観たか?

いざセックスするとなると離れていく

 未悠さんは、かなり年上のおじさんがタイプらしい。 「男の人と会うときは、最初はめっちゃ気合い入れていく。香水とか。最初だけやけどな。そのうちGパンとかなるけど」と眉尻を下げて、申し訳なさそうな柔らかな表情で笑う。ズボラなところも多そうだ。  同じ悩みを持つ友人たちに、未悠さんはこう打ち明けてもいる。 「恋愛の先にはセックスがある。でもセックスでけへんやん私たち」「理解してるとは言うけど、いざセックスするとなると離れていく」  “だから”、性別適合手術を受けることにしたのだろう、と言うと短絡的すぎるだろうか。  少なくとも未悠さんの決断は、他者との、社会との関りを強く求めてのことだと思われる。身近な人たちがその決断を受け容れていることからも、そのことはわかる。

「女の子として普通の恋愛をしてほしい」

 幼馴染の女性たちから、「女の子として普通の恋愛をしてほしい」「旅行も一緒に行ける」と励まされる未悠さん。同窓会では「尊敬する」とまで言われている。  バイト先の蕎麦屋では、男性の姿で応募して働いていたが、ある日「女の子でいきたい」と話すと、「ほな、それでいこか」と認められた。  大学の教授たちも、未悠さんの意思を尊重して、その決断を全面的にバックアップしている。  まわりの人々が未悠さんの味方をしているのは、性別適合手術を受けるという、後戻りのできない大きな決断を下したからではない。未悠さん自身を尊重しているから、その意思や決断を支えようとしているのだ。  だからこそ、未悠さんの家族の反応に、僕は強い違和感を感じてしまった。
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中島らも「デリは危ないから箱ヘルにしとけ」
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『女になる』
監督/田中幸夫
出演/未悠、みむ、Naoほか
配給/オリオフィルムズ 新宿K’s cinemaにて単館公開中
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