更新日:2019年08月01日 22:53
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“安倍応援団商売”は戦時中の東條御用言論とそっくり――倉山満

 頭が痛いのは、税率を上げれば税収が増えると考えていることだ。  簡単に考えよう。100円の缶ジュースが今は108円で売られている。100本売れれば、合計800円が税収となる。税率が10%に上がれば110円で、合計1000円が税収となる。売り上げが同じならば。こんなものは小学生でもわかる。  しかし、仮に消費税を2%上げて、売り上げが3割落ちたとしよう。110円×70本で、700円分の税収となる。税収は100円下がる。  つまり税率を上げても、税収が上がるとは限らないのだ。税金が高い時に買い物をするなど、よほどの変わり者だ。ここで言う売り上げとは、経済全体の成長率のたとえだ。景気が悪くなれば、買い物をしなくなり、売り上げが減り……デフレスパイラルに逆戻りである。過去の増税でも、税収は減ったし、景気は悪化した。  現に安倍首相が来年の増税を表明した瞬間、株価は大下落した。当たり前の話で、ようやく景気回復の兆しが見えたときに、増税で冷や水を浴びせる。市場は、恐れおののいているではないか。  デフレ脱却前に増税するとは、どういうことか。日本経済は餓死寸前だった。ようやく栄養失調から回復しようとしている時に、急激なダイエットを始めるようなものだ。  これまで安倍首相は、自民党反主流派や野党が弱すぎて、自分に代わる者などいない。日本人は自分を支持するしかほかにないと、国民を舐め切ってきたのだろう。だが、もはや安倍内閣を支持する理由はない。

“安倍応援団商売”も、戦時中の東條御用言論とそっくりである

 今やすっかり死語となったが、「戦後レジームからの脱却」を掲げて安倍首相は返り咲いた。戦後レジームとは何か。日本を敗戦国のままにさせる体制のことだ。では、なぜ日本は戦争に負けたか。正論が通らなかったからである。  対米開戦直前、4年にわたる支那事変で大日本帝国は疲弊していた。そんな時に軍が、アメリカと戦争をすると言い出した。当時も心ある人は、「支那事変も片付かないのに、アメリカと戦うなど、お偉いさんたちには、どんな秘策があるのだろう」といぶかしがった。しかし、現実には何もなかった。  対米戦を指導した総理大臣の東條英機は己の無能を批判されるたびに反対派を弾圧し、必ず「これは戦争に勝つためだ」と言い訳した。  東條が罪深かったのは、その「戦争に勝つため」の意見にも耳を傾けなかったことだ。己の狭い了見と貧弱な知性で納得のいく結論だけですべてを決めてしまう。部下の官僚がでっちあげた作文にだけ耳を貸す。  こういうことを書くと必ず御用言論人が飛び出してくる。「安倍首相はまだ増税を決めたワケではない」「安倍さんを信じよ」「安倍サマに逆らうとは、貴様はパヨクか」と。“安倍応援団商売”も、戦時中の東條御用言論とそっくりである。だが、今後は言うべきことは言う。安倍首相が増税を撤回し、景気を回復させない限り、批判させてもらう。  安倍首相に功績がないとは言わない。アベノミクスの効果はあった。しかし、私と同世代の多くは、今さらアベノミクスの恩恵など届かない、捨てられた世代なのだ。『SPA!』では毎週のようにロスジェネ世代の惨状が伝えられている。安倍首相は、その人たちに死ねというのか?  読者よ、怒れ!  鉄槌を下す相手は、安倍内閣だ!
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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