ライフ

和室を新設するラブホはなぜ増えた? さいたま市の穴場的ラブホを訪ねて/文筆家・古谷経衡

綺麗な和室で旅館気分の「WIZ」

インバウンドを狙い和室を新設

 無論、賢明な読者諸兄ならば経験則で分かろうが、ラブホに和室が存在するのはそこまで珍しいことでは無い。一般的には、近代化改装が施されていない郡部に立地するラブホなどには、いまだ旧態依然とした和室が存在する場合もある。これは、旅館時代の内装をそのままラブホテルとして運営・申請したものの名残であったりする。  しかし「WIZ」の和室はわざわざ洋室部分を改装して和室を新設したものであり、写真のように新鮮で清潔で洗練されたものだ。最近、都心部のラブホではこの手の和室構造が実は増えているのである。なぜかーー。  その要因は急増する外国人訪日客である。日本式居室の象徴である和室をわざわざ新設することで、日式ラブホをアピールするという意図から、部屋の一部に和室を導入するラブホが実は増えているのだ。  急増する訪日外国人客に客室が追いつかず、外国人がラブホを利用することは多い。その際に、日式和室を英語でアピールするラブホが増えているのである。和室=旧態依然という図式では無く、むしろ洗練された空間として、客室演出の一種として取り入れる向きが、いまラブホ業界では静かにブームである。  ただしこの和室、館内全客室の一部であり、全客室が和室化されているわけでは無いので、休憩・宿泊は早い者勝ちであることに留意されたい。 ●ラブホテルQ&A Q. 会社の経費として独りラブホ利用に領収書が欲しいのですが、発行は可能ですか? A. 伊丹十三の大傑作映画『マルサの女』(1987年)で、社会通念上領収書を発行しない商慣習があるラブホテルの経営者・権堂(山崎努役)がマルサに摘発されるシーンがあります。しかしこれは80年代後期のお話であり、現在のラブホは機械式精算機の設置など、客数と利用金額がコンピュータに記憶されることにより、納税額がほぼ把握されているので、必ずしも脱税の温床とは見なされておりません。  よって現在、ラブホの領収書は望めば別途出してくれるところが殆どです。しかし手書きで無い場合、「独りで宿泊したにもかかわらず」、利用人員の部分に「2名」などと機械的に印字される場合があり、その場合は貴方の会社の経理部から後日査問を受ける場合があります。会社経費として扱うのにはまだまだ大きな関門が立ちはだかっていると言えましょう。
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
1
2
おすすめ記事