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「給食だけで生きていた」育児放棄された少女を救った「ばあちゃんの芋」

 こんなネグレクトが続けば、給食のない夏休みは、文字通り「命」にかかわる。 「だから、夏休み中、父親は母方の実家に私を預けていたんですよ。母方の祖父母は70歳を超えていて、ずっと私を引き取ることは難しかったようですが、夏休みだけは面倒を見てくれました」  佐久間さんはそこで生まれて初めて「家庭料理」を口にする。祖父母はやせ細った孫に愛情を込めた食事を用意した。 里芋「山間部の農家で、一番近いお店に行くのも1時間ぐらいの道のりがあって、たいていは畑のものを食べるんです。祖父母の家も貧しかったと思います。毎日、食事にイモの煮ものが出るんです。  朝、昼、晩、毎日、イモ、イモ、イモ(笑)。特に里芋が多かったですね。『里芋はたんと栄養があるけえ、いっぱい、食いんさい』って。そして祖父が晩酌しながら、ニコニコして『おいしいか』と聞いてくる。  それが嬉しくて。本当においしかったなあ。でもね、大人になってからは体がイモ類を受け付けないのか、食べられないんです」  佐久間さんが喜んで食べていたのは、幼い彼女の命を救った「家庭の味」であり、かわいい孫を心配する祖父母の「肉親の情」だった。 「幼少期の記憶はほとんどないんですが、祖父母と一緒に食べたイモ、それだけが私の色づいた記憶なんです」 ★佐久間さんの貧困川柳『母死んで 私を救った 祖母のイモ』 ― [泣ける貧困飯]を再現 ―
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