「厚生年金は手厚く、国民年金は受給額が少ない」という通説の誤解
消費税が10%に上がるのは目前に迫り、将来もらえる年金は崩壊状態。長生きリスクで老後破産が現実のものとなっている。6月に降ってわいた「老後2000万円不足問題」で、日本の年金制度への不信感はますます高まっている。
発売からわずか1か月足らずで10万部を突破しベストセラーとなっている『上級国民/下級国民』(小学館新書)の著者・橘玲氏は、このような現状に対し、『消費増税×老後2000万円問題 最強の解決ガイド』で年金の“残酷すぎる真実”を明かし、警鐘を鳴らしている。
「メディアでは『国民年金はもらえる年金が少ないので、できるだけ厚生年金に加入しよう』という話になっていますが、私はこれを『陰謀論』の類だと思っています。国民年金の保険料は月額1万6410円(’19年)で、40年間の支払い総額は787万6800円です。受給額は満額で月額6万5008円ですから、65歳時点の平均余命を男性19.57年、女性24.43年(簡易生命表2017)で試算すると、受給総額は男性で約1500万円、女性が約1900万円。支払った保険料が男性で1.9倍、女性なら2.4倍になっています」(橘氏)
一方、厚生年金は1000万円ものマイナスになるという。
「フルタイムで正社員を続けた大卒男性の平均的な生涯賃金は、(退職金を含めずに)約2億7000万円。これに18.3%の保険料率を掛ければ、大学卒業から定年までに納める厚生年金の保険料の総額はおおよそ4900万円ということになります。対して厚生年金の平均受給額は男性16万5668円で、65歳の平均余命(19.57年)で受給総額を計算すると、3900万円にしかなりません。あくまでも概算ですが、それでも1000万円も損をしているのです」(橘氏)
なぜ「厚生年金は手厚く、国民年金は受給額が少ない」といわれるのか。
「国民年金の受給額が少ないのは、単に支払っている保険料が少ないからで、仕組みそのものは加給者が得をするようになっています。それに対して厚生年金が大損になるのは、高齢者に支払う莫大な年金の原資を調達するために多額の税を投入し、それでも足りない分をサラリーマンから“搾取”することで日本の年金制度がなんとか成り立っているからです。サラリーマンがこの“搾取”の実態に気づいていないので、大きな問題にならないだけです。
厚生年金は報酬月額の18.3%を労使で折半することになっていますが、厚生年金や組合健保の保険料は人件費そのもので、本来は社員が全額支払うべきものを形式的に会社が半分負担しているだけ。その会社負担分が国家によって『没収』されている。これが厚生年金の実態です」(橘氏)
その没収された保険料は「言うまでもなく、巨額の赤字に陥っている年金財政の補填に使われている」と橘氏は指摘する。今後、消費税もさらに増え、老後の年金も安心ではない時代に備えて、お金、仕事、住まい、人生をどう生きるかを今から準備しなければならない。<取材・文/週刊SPA!編集部>


内閣府経済社会総合研究所で経済学者の鈴木亘氏らがまとめた研究によると、これから社会に出る2000年生まれの若者が厚生年金と組合健保に加入すると3720万円の損失、1990年生まれは3450万円の損失、1980年生まれは2940万円の損失となっている。これは2012年に内閣府がホームページにアップし、日経新聞が報じた。
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