器用でしぶとい馬に注目
――TAROさんがアヌラーダプラに目をつけたポイントを教えてください。
TARO:この馬はセンスが良くて、まさに今の競馬向きですね。キタサンブラックやアーモンドアイもそうですけど、立ち回りが上手。アヌラーダプラは、有力馬が多数いるキャロットクラブの中では今のところ少し地味な存在なんですが、『ザ・ロイヤルファミリー』の中でも、セリ市で安く買えた馬がレースに勝つシーンがありますよね。それと同じで、現段階ではそこまで注目されているわけではないんですけど、今年は主役を張れるぐらい出世する馬だと思います。桜花賞で勝ち負けできる可能性もありますよ。
早見:でも、この手のセンスの良い馬って、ファンがつきにくいですよね。いつも堅実な馬より、どちらかといえば荒々しく、大勝ちするか大負けするかみたいな馬にファンはつきやすい。
TARO:まさにゴールドシップみたいな、豪快で浮き沈みのある馬の方が物語としてはおもしろいですもんね。でも、僕はやっぱり、馬券を買うなら5年前の有馬記念で勝たせてもらったゴールドアクターのような馬を推したくなりますね。
早見:TAROさん、ホントにあの手の馬が好きですね! 5番手ぐらいをいく、器用でしぶとい馬。有馬記念もヴェロックスだって言ってたし(笑)。
――渋い趣味を貫いていらっしゃいますね! さて、年初めということで、今年の競馬での目標はありますか? 早見さんはやっぱり4億円ゲットですか?
早見:いや、今年の目標は「もう二度と馬券をやらない」です。僕、馬券やめるの得意で、去年も7回ぐらいやめてるんですけど、そのたびに娘に「出た~また言ってる~」って言われてます。
TARO:それ、絶対にやめないやつですよね(笑)。うーん。僕はやっぱり、大きいレースを当てたい。予想家としても大きなレースを当てると、たくさん称賛していただけるので(笑)。
早見:注目される快感、わかります。ロードヴァンドールの初GⅠは’17年の大阪杯だったんですけど、そのときに『ザ・ロイヤルファミリー』の取材でお世話になったサトノクラウンの里見会長も阪神競馬場にいらしていて。本来は一口馬主なんて立ち入れない場所なんですけど、恥も外聞もなく里見さんに頼み込んで、パドックに入れてもらったんです。そこで目にした圧巻の景色は本にも反映できてると思います。一口とはいえ自分の馬を見られている快感ときたら……!
TARO:完全に物語の世界ですね。
早見:本当にそうでした。謎の達成感があったし、自己顕示欲が満たされる感覚もあった。僕、その日のパドックでやけに注目されている気がしたんです。きっとバカみたいにロン毛を引っ詰めていることや、コートの襟をギンギンに立てていることが理由なんだと捉えて、「競馬ファンの視線が刺さるなぁ。参ったなぁ」って悦に入っていたんですけど、チラッと振り返ったら、僕の真後ろでサブちゃん(北島三郎)がインタビューを受けていた。「ああ、そっちか!」って、顔が真っ赤っかになったのをよく覚えています。
TARO:キタサンブラックが勝ったときですね! 僕、そのときサブちゃんをパドックの外から見てる側でした(笑)。阪神競馬場のパドックって、日本一と言って良いぐらい重厚感があって、良い場所ですよね。
早見:うん、コロシアム的な雰囲気があって、僕も一番好きかもしれません。ああ、こんな話していたら行きたくなってきた。馬券をやめるのは、最後に阪神で大勝負してからにしようかな(笑)。
馬と人がつむぐドラマに足を突っ込んだら、もう抜けられない。そんな競馬ファンたちにとって、今年もいい年でありますように。
<取材・文/松嶋千春 野中ツトム(清談社) 撮影/赤松洋太>
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