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日本が国際社会で生き残るためにはどうすべきか/倉山満

プーチンにとって「失地回復」以外の何物でもない

 ソ連崩壊後、ロシアのボリス・エリツィン大統領を、アメリカのビル・クリントン大統領はコケにし続けた。’90年代を通じたバルカン紛争の末に、エリツィンは子分のセルビアを守り切れなかった。他のバルカン諸国は米欧の軍事同盟であるNATO入り。ロシアのくびきを完全に離れ、アメリカの庇護下に入った。そしてNATOは東方拡大。こうした屈辱的な状態を背景に、ロシアの独裁者となったのがプーチンだ。  プーチンは’08年北京五輪の時も、西側陣営に馳せ参じたグルジアに侵攻。領土を掠め取った。これにアメリカ抜きのヨーロッパは、なすすべがなかった。隙あらばと、’14年には、ウクライナからクリミア半島を奪いとった。  我々にとっては「侵攻」以外の何物でもなくとも、プーチンにとっては「失地回復」以外の何物でもないのだ。

ウクライナは、西側諸国にとっての「盾」

 だが、西側諸国も一枚岩ではない。米英仏独といった西側の大国は、必ずしもNATOの拡大を望んでいない。ソ連や帝政ロシアに苦しめられた東欧諸国はNATOに入りたいだろうが、ロシアとの対峙は米欧にとっては迷惑な話でもある。だから、隣国のウクライナは、NATOにいれたくない。「盾」として使いたい。  世界の覇権国家であるアメリカは、中国の台頭を脅威に感じている。ヨーロッパの問題など、英仏独に任せておきたいのだ。中国に専念したい。だから、中東にも不用意な手出しはしないし、アフガニスタンからも引きあげた。そうしたアメリカの心理を、プーチンは突いた。  10万を超えるロシアの地上軍が、ウクライナに集結している。かつてない大規模な動員だ。戦になるか否か、本気度は地上軍を動員するか否かが最大の指標だ。今回のプーチンは、明らかな本気を見せている。  これに対し、アメリカも戦後初めて海軍をNATOの指揮下に入れた。ロシアを地中海に絶対に出さない、との姿勢だ。1万人に満たない数の小出しながら、陸軍の動員も決めた。遅まきながら、バイデンも舐められまいと身構えた。

ロシアに対峙する米欧を安全地帯で見守る中国

 米欧は、ウクライナを本気で守る以外のあらゆる方法で支援するだろう。金を出す、兵器を渡す、戦い方を教える、国境の外に軍隊を集結させる、等々。  中国は、グルジア侵攻の時と同じく「ウチはオリンピックの最中なので」と他人のフリだし、いざとなれば「ウチがオリンピックの最中に、貴様らは何をしている」と言える。安全地帯で、一の子分のプーチンが米欧を翻弄するのを睥睨(へいげい)しているだけで良い。  ましてや、米欧がロシアに縛り付けられると、笑いが止まらない。中国の狙いは台湾。米欧が束になってロシアの侵攻を止められないとなると、台湾への野心をむき出しにするだろう。ウイグルや香港など、中国共産党の私有物なのだ。助ける方法など無い。むしろ今の中国は他人の持ち物を奪おうとしているのだ。
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アメリカが同盟国を守る力がないとなると、日本はどうなる?
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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