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民主主義のルール「声を上げない者が最大の負担を押しつけられる」

 いよいよ衆院総選挙の投票日が近づいてきた。“民主党旋風”が巻き起こった3年前の衆院選に対し、今回はその“ゆり戻し選挙”の様相を呈している。

 雇用問題や社会保障問題に詳しい人事コンサルタント城繁幸氏は、著書『若者を殺すのは誰か?』のなかで、日本の政治や企業・雇用システムがいかに若者に対して公平を欠いたもので、現役世代を苦しめているかを語っている。

 例えば年金なんて、専門家が「あと20年で破綻する」と断言している状況だ。厚生年金の現行制度は積立金の運用利回り4.1%、賃金上昇率2.5%という厚生労働省のムチャクチャな数値予測に基づいており、到底維持するのは不可能である。

 なのに、既に引退している高齢者向けの年金支給や社会保障のカットなんて誰も言わない。怖くて言えない。仕方ないから、これからもらう人たちの年金支給開始年齢を65歳に引き上げる。すると、今度は50代のオジさんたちが文句を言うから、やむを得ず定年の65歳延長を義務化しようとするありさま。定年を引き上げれば、その分、若者の雇用が失われるのは当然のことなのに……。

 こんな感じで、日本では諸事、高齢者優遇の政治がずっと続けられている。

「『民主主義は公平なシステム』で、『民主主義は正義を実現』し、『政治家は国民みんなのことを考えてくれている』と考えているようなら、それは大きな誤解です。民主主義は個人に平等な選挙権は与えてくれるが、行使する・しないは個人の自由。その結果、政策が万人に対して公平だとは限りません。むしろ、声の大きな人たちに有利なかたちで実現するケースのほうが多いと思う。そして政治家も、声の大きな人たちを優遇するのは当然のこと。彼らは何よりも選挙に勝たなければならず、そのためには自らに投票してくれる人を囲い込む必要があるためだからです」(城氏)

 そんななか、声を上げず、投票もしない集団がいたらどうなるか。すべてのツケは彼らに押しつけられるに違いない。民主党旋風が巻き起こった3年前の平成21年8月30日衆院選の年齢別投票率は次のようになっている。ここ6回の衆院選のなかでは最も高い投票率だったが、それでも若い世代ほど投票率が低い。

◆社会の不公平さは、若者自身にも責任がある

投票率

財団法人明るい選挙推進協会より

 若者に限らず、現役世代であれば、日々の暮らしのなかで必ず目に見えない壁にぶつかっているはず。例えば、「なんで社会保障給付って高齢者ばっかりに使われてるの?」とか「定年延長は義務化するのに、なぜ失業者や学生は無視するの?」とか「なぜ子育てしながら働いちゃダメなの?」とか……。

 現役世代で高齢者を支え続けるという社会保障制度も、「終身雇用」という世界でも類を見ないシステムも、女性の社会進出の遅れも、それらの根っこをたどっていくと、すべては今から50年ほど前の高度成長期につくられた一連の制度に行き着く。この時代に形作られたシステムが根っこにあり、そのせいで今の日本人はずいぶんと息苦しい思いをしている。

 現役世代の多くは生まれたときから当たり前のように信じ、受け入れてきたそれらのシステムをぶっ壊さない限り、日本は変わらないということだ。しかし、それを“民主主義体制”で変えることは、とてつもなく困難だ。

「それでも、私たちはそれを変えなければいけない。でも同時に、我々自身も変わらなければならないのです。残念ながら、社会の不公平さの何割かは、若者自身に責任があるのも事実だから」と城氏は指摘する。

 中心的な争点となっている原発・エネルギー問題、TPP参加問題、外交・安全保障などは、いずれも国益を左右する最重要課題である。しかしその陰で、30代と60歳以上で6077万円にも開く年金・社会保障の格差、非正規社員や失業者の雇用、女性の子育て・雇用、そして震災復興など身近な争点が忘れ去られていないだろうか。

 今週末は衆院選が行われる。「声を上げない者が最大の負担を押しつけられる」というのが民主主義の“ルール”であることを忘れないようにしたい。 <取材・文/横山 薫>

若者を殺すのは誰か?

将来世代を追い詰めているのは誰か




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