雑学

「16年、歌舞伎町を毎日撮り続けた男」の写真ルポ

歌舞伎町

『歌舞伎町』権 徹 著

 16年にわたって新宿・歌舞伎町を撮り続けてきた韓国人写真家の権徹(ゴン・チョル)氏が写真ルポ『歌舞伎町』を上梓した。256ページオールカラー、いまはなき新宿コマ劇場の最終公演が表紙となっている。
権氏は元韓国軍海兵隊スナイパー。「危険をかいくぐって、相手を一発で仕留めるという点では一緒」と語る。鍛え抜かれた身体で、毎日約3万歩を歩くという。スリが財布を盗む瞬間や通り魔事件の現場、路上ケンカでケリが顔面に入った瞬間、麻薬犯の逮捕シーンなど、どれも街を毎日歩いているからこそ撮れたショットだ。

「歌舞伎町にはヤクザ、警察、キャッチ、ホスト、在日外国人、風俗嬢、ホームレスなどいろいろな人たちがいますが、ボクは誰とも仲良くはしません。誰かと親密にすれば同時に誰かの敵になる可能性も出てくるので。常に中立の立場でなければ、歌舞伎町のジャーナリストは務まりません」(権氏)

⇒【写真】16年にわたって撮り続けてきた新宿・歌舞伎町
http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=385593


 とはいえ、その視線は温かい。オーバーステイで摘発される外国人や、軽犯罪で逮捕される側の立場も強く意識している。

 例えば、牛丼店で「タダ食い」した犯人を逮捕・連行する場面の写真。すでに観念して無抵抗だというのに、警察官は犯人を地面に倒して顔を踏みつけたり、笑いながら髪の毛を引っ張ったりしている。

歌舞伎町「相手が犯罪者だからといって、何でもやっていいというわけではない。大きな犯罪は見過ごしておきながら、『お金に困って仕方なく食べ物を盗んでしまった』というような犯人に必要以上の暴力を振るうのは許せない。だからそういう場合は、カメラマンがいることをわざと知らせるようにして撮っているんです」(同)

 また、本書にはコマ劇場前広場でのイベント、酔っ払って騒ぐ学生やサラリーマン、繁華街で遊ぶ子どもたち、御輿や盆踊りなど「平和な歌舞伎町」の写真も数多く収載されている。

「ボクはずっと雑誌の仕事を中心にしてきたので、これまで発表した写真はエロや暴力、事件などが多かったのですが、それは一面でしかありません。本当の歌舞伎町は、涙もあれば笑顔もある。犯罪もあれば平和な日常もある。セレブもいればホームレスもいる。いろいろなものが絡み合った、複雑で面白い街なんです。この本は、16年間ずっと歩き続けたボクの結晶。これからもずっと撮り続けますよ!」(同)

歌舞伎町【権徹氏】
1967年韓国生まれ。大学在学中の1988年に休学して韓国海兵隊に入隊。大学卒業後の1994年に来日、日本写真芸術専門学校に入学、報道写真家の樋口健二氏に師事する。歌舞伎町取材をライフワークとして、16年にわたって撮り続けている。その他、北朝鮮脱北者、日本・韓国の元ハンセン病患者、原発、在日朝鮮人、米軍基地、韓流ブームなどの取材も並行して行う。著書に『歌舞伎町のこころちゃん』(講談社)など。http://kwonchoul.com/

<取材・文/北村土龍>

歌舞伎町

アナタの知らない歌舞伎町の姿




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