ゴーン被告が逃亡したベイルートで見た、高層ビルと廃墟が混在する光景
38万3497円で、格安ビジネスクラスで世界一周する今回の旅。中国からUAE、サウジアラビアと中東ルートをたどり、訪問4か国となったヨルダンでは、首都アンマンの中心部に滞在した。
ホテルは市内の人気観光スポットでもある「キング・アブドゥッラー1世モスク」の目の前という最高のロケーションだったが、困ったのは毎朝5時過ぎに大音量で流れるコーラン。最初は何事かとビックリして飛び起きてしまったが、ちょっと早い目覚ましの代わりだと思うことにした。むしろ、自分がイスラム圏に居ることを体感できるというものだ。
だが、冬場でも日中25度以上あったUAEやサウジアラビアと違い、アンマンの気温は15度前後。夜は5度以下に冷え込む日もあり、冬場の東京と大差ない寒さだ。
そんなアンマンは丘がいくつも連なった大都市でとにかく坂道が多い。遺跡のあるアンマン城塞も坂を上った丘の頂上にあって市内が一望でき、近くにあるローマ円形劇場もよく見える。
ヨルダンというと塩分濃度の高い湖として有名な死海、映画『インディーズ最後の聖戦』のロケ地となったペトラ遺跡が有名だが、アンマン市内も思いのほか見どころが多く、街歩きも楽しかった。
そのアンマンからはレバノンのベイルートを経由して地中海に浮かぶキプロスへ。利用したのはミドル・イースト航空という日本人にはまったくなじみのないレバノンのキャリアフラッグで、航空券代はビジネスクラス片道で3万9480円。ビジネスとはいえ2区間合わせても500キロはなく、移動距離を考えると割安ではない。
なお、アンマンのクイーンアリア国際空港では全航空会社が同じラウンジを利用。ターミナル中央の吹き抜け部分にあり、スペースの割にソファーやイスの数が少ないせいか全体的にゆったりした空間になっている。
フードメニューはチキンの串焼きケバブ、アラビア風ミートボールのキョフテなどアラビア料理があり、どれも味はまずます。
午前中のフライトだったのでお酒は飲まなかったが、このラウンジではアルコールも提供。イスラム教の国だがヨルダンワインが有名だそうで、バーカウンターではその地元ワインを飲めるようだ。
アンマン~ベイルートの飛行時間は1時間だったが、筆者を含むビジネスクラスの客には機内食が提供される。しかし、10分ちょっとで着陸への準備態勢に入るのでトレーを下げられてしまった。普段から早食いの筆者は完食したが、それでもギリギリで通路を挟んだ隣の席に座っていた年配のアラブ人女性は半分も食べることができていなかった。
ただし、機内食以上に驚いたのは、飛行機が内戦状態にあるシリア上空を飛んでいたこと。てっきり迂回したルートを飛ぶものだと思っていたため、途中でフライトマップを見て気づいたときはさすがに焦った。
これまで味わったことがない緊張感に襲われたフライトだったが、とりあえず何事もなくベイルートに到着。
ちなみに筆者がベイルートに立ち寄ったのは、今話題のカルロス・ゴーン被告が入国したとされる日の数日前。もし訪れたのが逃亡報道後だったらと思うと、ライターとしては惜しい気もするが、縁がなかったと諦めるしかない。
それでも次のキプロスのラルナカ行きの便までは9時間近くあったので、いったん入国してベイルート市内を観て回ることに。そんなレバノンはシリアに隣接し、国境から50キロほどしか離れておらず、内戦から逃げてきた150万人以上の難民がいるという。
これに加え、50万人を超えるパレスチナ難民もいるそうだが、首都ベイルートは“中東のパリ”と呼ばれ、市内中心部にはヨーロッパ風の建物が並び、海沿いのエリアには高級ホテルや高層ビルがズラリ。シリア同様に内戦の国というイメージを抱く人もいるかもしれないが、内戦終結から2020年でちょうど30年。砲撃の跡だらけの高層ホテル廃虚が放置されているなど内戦の爪痕もいたるところに残っていたが、欧米人観光客の姿も多く、少なくとも日中の市内中心部に限っては治安が悪いという印象はなかった。
内戦中のシリア上空を飛行
高層ビルや内戦時代の廃虚が混在するベイルートの街
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フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
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