山田ゴメスの俺の恋を笑うな
最強の美男子
いつものように
喫茶室ルノアールで
原稿を書いていると、
20代前半くらいの男が
となりの席についた。
ちらりと見てみると、
身長は180㎝をゆうに超え、
とても端正な顔立ちをした
非の打ち所のない美男子だった。
そして、10分ほどが経過して
「ごめ〜ん、道に迷っちゃった!」
と、彼と同じ年くらいの
女がやってきた。
二人の会話は
たわいもないもので、
最初は私も
さして気にも留めず
原稿に集中していたのだが、
どうも男のほうの
しゃべり口調に
ちょっとした
違和感を感じる。
とくにサ行を
口に出すとき
すーっと
息の抜けたような
ニュアンスに
なるのだ。
そして、集中力が
そっちに取られ始めたころ、
おもむろに女のほうが
「で、アンタ、
いつになったら
歯、入れんのよ〜?」
と、彼に向かって
笑いながら問いかける。
驚いた私が
急いで男のほうを
見てみたら……、
なんと!
上側の前歯が
キレイに2本
抜けている
のである。
その凄まじい
ギャップに戸惑う私に、
その彼はさらなる
追い打ちをかける。
抜けた歯の部分を
隠そうともせず
自信たっぷりの
満面の笑みで
こう言い放ったのだ。
「だって、
抜けてるほうが
おもしろいじゃん!」
この男だけには
一生勝てない……。
完膚無きまでの敗北感を胸に
ルノアールをあとにした
私であった。
2013.07.07 |
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