渡辺浩弐の日々是コージ中
第239回
11月18日「CM500本イッキ見」
・世界のCMフェスティバル。映画館(新宿ミラノ座)で、世界各国のコマーシャルフィルムを延々と上映するイベント。超満員の会場が数十秒ごとに大歓声で揺れるお祭り騒ぎが、オールナイトで続く。
・ネットCM時代になってテレビでは見られないような過激作品も増えている。まとめて見るには良い場だと思う。これからまだ各地で行われるそうなので、機会があったらぜひ。
・CFは1本数十秒の超ショートムービーとしても、もっと注目されて良いと思う。CMというジャンルがあまりに特異な形で成立しているせいで、有料コンテンツとしての価値を認められにくいことが今のところネックだろうか。
11月25日「渋谷ケータイ文化輸出?」
・スクウェア-エニックス社にて、連載コミック『プラトニックチェーン』の打ち合わせ。新刊は12月末に出ます。それから香港版・台湾版・韓国版も出ることになった。香港版のタイトルは『網路尋謎』台湾版は『柏拉圖之鏈』。網路はネットのこと。柏拉圖はプラトン。なるほど。
11月28日「よいお年を」
・僕は一般社会とは生活サイクルが違う。一日の長さの設定自体が違うのだ。大抵の人は体内時計と実時計に誤差がある。つまり一日25時間のはずなのに無理に24時間サイクルで生きてたりする。そのせいで毎朝目覚ましが鳴るたびにつらい思いをしているのだ。
・仕事上のコミュニケーションは、ネットとケータイで9割方足りるようになっている。だから今は自分のサイクルで生きていても弊害はほとんどない。たまに朝の6時頃にアポを入れようとして嫌がられたりすることはあるが。
・そしてここ数年は、パソコンの時計に細工をして、時計の進み方をほんの少し速くしている。1時間に1時間5分進むようにしてあるのだ。すると、1年が335日程度で終了する。そして毎年1ヶ月程度が、余る。
・つまり、僕のカレンダーではそろそろ年末である。そして1年終わった頃に、まるまる1ヶ月休めるわけである。いいでしょう。
第238回
11月7日「オタクはお嫌いなのかなぁ?」
・「X-boxカフェ」に行ってみた。表参道の紀伊國屋跡に特設されたホールだ。発売前のX-box360対応ソフトを並ばずに遊べる穴場である。
・綺麗でお洒落で、良くも悪くも80年代的な空間。青山あたりのバーでモデルを口説いてる広告業界人的センスというか。ゲームショウやショップ店頭イベントと違ってど真ん中のゲームマニアが入りにくいような雰囲気は、狙いなのかなー。360は「ゲームの一般化」という戦略をもって、泥をくぐらずにスマートに売っていくつもりなのだろうか。
・360は素晴らしいタイトル揃いだが、欠けているのは「必然性」だと僕は思う。進化形であり斬新性はないのだ。ハードごと買わせるようなマニアックな魅力を真剣に訴求しなくてはならない時機に、かっこつけてて大丈夫なのかしらと思う。余計なお世話ですが。
11月8日「商売がたきの皆さんに」
・A系フリーペーパー『マントラ』のインタビュー受ける。クリエーター志望の方々向けの媒体である。PS3参入に必要な初期資金は20億円だ、なんて報道がなされてしまう時代の、若い独立系クリエーターの戦略について話した。冬コミ配布の号に載ります。
・来年どんな活動をするか、と聞かれて答えるうちに、ネットを活用し、直接受け手に向けて書くスタイルの仕事が多いことに気づいた。じゃあみんな商売がたきってことになるじゃん。
11月9日「かめはめ肩」
・朝から腕が筋肉痛で一体なんだこれはと思っていたが、無意識にまた『ドラゴンボールZ・バトル体感格闘かめはめ波』を始めていて気づいた。明らかにこのゲームのやりすぎなのだ。
・完全に中毒になっている。そしてこれ体脂肪が3日で1パー落ちるほどの運動量だ。体感ゲームにありがちな左右非対称の不自然な動きではなく、両掌をむすんでひらいて、とか、両腕を上下にスライド といった健康体操的な動きがほとんどなのだ。運動不足の人にマジお勧めである。
・さてバンダイがXaviXチップを使ったソフト・ハード一体型ゲーム機をいろいろと企画してるって話をこないだ書いたけれども、その中に思わず膝を叩く商品企画があり、及ばずながら協力させて頂くことになった。続報します。
第237回
10月28日「ヘルシーな街」
・私のいる某雑居ビルには既にコスプレショップが3軒メイド喫茶が2軒メイドゲーセンが1軒あるわけだが、今度はすぐ近所に”メイドヘルス”ができた。窓から見えてしまうので気が散って仕方がないのだがヘルスって、ヘルスセンターとかスーパー銭湯みたいなものか?
・ところで3階のメイドカフェは夜のみの営業で、普通のアイス屋さんが19時からいきなりメイド仕様に変身する。その直前に行けば「俺はアイスが食べたいだけなんだ……本当はメイドなんか興味ないんだ」という顔をしていられる。それから4階のメイドゲーセンは「俺はただメイドさんが見たいだけなんだ……こんなにマニアックな2Dゲームには本当は興味ないんだ」という顔をしていられる。
10月29日「親殺し子殺し」
・肉親による子供の虐待はよほどの事例になってはじめて表沙汰になるわけで、報道されているのは氷山の一角だろう。ひどい目に遭っている子供が、家族以外に助けを求めることは現実的には非常に困難なのだ。
・さらに、もしなんとか話す機会があったとしても、「実の親のことを尊敬しないなんて子は人間失格よ」とか「親がやることは、どんなにひどいと思うようなことでも実は愛情をもってやってるはず……あんたもいつか大人になったらわかるわよ」なんてことをしゃあしゃあというバカが世間には非常に多いのである。そういう奴らは虐待されて死んでいった子供達に対しても是非それを言ってほしい。
・子供が親の虐待に対抗するには相手を「殺す」しかないのだ。ならば全ての子供にはその権利を与えるべきではないか……という、小説を書いた。『殺して良い日』というタイトルで、ファウストにそのうち載ります。
11月6日「スクープのこつ」
・NHKの事例は非常にシンプルで、わかりやすい。生真面目な現場で生真面目な記者が壊れてしまったということだろう。ところが、これはブログ時代に爆発的に拡大再生産されかねない事例だということに皆、気づいているだろうか。
・メジャー放送にまでケータイのカメラ映像が使われるほど報道の視点がストリートレベルになると、放っておくとニュースを作りながらニュースを流すという自家発電が始まってしまう。例えばIT系の会社のスター経営者の方々はそういうことを巧妙にやっているわけである。火が燃え上がってから撮るのではなく、火を点けている自分を撮って流しているのだ。そういう企業が報道に進出する時、一般ブロガーからネタを買うという方法を採ることになる。
・その先のシミュレーションや対策は既にもう、遅いかもしれない。だから渡辺浩弐の小説を読んでおけばよかったのである。