渡辺浩弐の日々是コージ中
第229回
9月16日「東京ゲームショウ2005」
・東京ゲームショウ。取りあえずスナップレポートです。ニューハード戦争の現況とかそこに向かう各ソフトメーカーのスタンスなどの考察は、次回。
・基調講演にて、任天堂・岩田聡社長から新ハード「Revolution(仮)」のコントローラーが発表された。一見テレビのリモコンに似ているが、画面を直接指し示してコントロールできるなど、DSのタッチパネルと同じコンセプトの直感的インターフェイスと言えそう。
・マイクロソフトXbox360は12/10発売(¥39795円)。スローガンは「ハイデフ」。ネットワーク、ハイビジョンテレビ、デジカメや携帯オーディオプレイヤー等に接続してそこから全てを操作するコントロールターミナルとしての機能が強調された。
・というわけでXbox360ブースではマイクロソフトが提唱するリビングルームのイメージが設営されていた。この「部屋」、なんというか’80年代トレンディードラマ的な雰囲気を発散していた。
・女子ばかりが集まっているゲームが激増したのも今回の傾向。これはPS2『ラプソディア』(コナミ)の試遊台。
・PSP『トークマン』(SCE)は声で入力する4カ国語同時翻訳ツール。ゲームモードで語学トレーニングもできる。試遊エリアでは外国人コンパニオンがお相手してくれた。
・『ときメモオンライン』授業風景。まずマニアックなファンがネットゲームの市場を開拓していく。
・バンダイとナムコは、早くも共同ブースで出展。例えばPS2『仮面ライダー響鬼』は響鬼のあの物語設定に、ナムコの『太鼓の達人』のゲームシステムが合体したもの。そういう好企画がどんどん出てきそう。
・バンダイ『ドラゴンボールZバトル体感格闘かめはめ波』両手の動きでかめはめ波が出せる。
・会場ではPSPやDSに無線で体験版を配信しているメーカーも多かった。今後、全国の販売店などでも有力な販促方法になるだろう。
・韓国メーカーや台湾メーカーは共同パビリオンで出展。これは韓国メーカー(CFN)が出展していた小型ロボット操作式のプライズゲーム機。
・KDDIはブロードバンド活用のネットワークゲームシステム『マルチマッチングBB』を提唱。カプコンやSNKのブースと繋いで格ゲーなどの遠隔対戦をショウイング。
・KOFやサムスピなど往年の傑作2D格ゲーが多数復活しているのは、ブロードバンド通信対戦に向いているためだ。SNKもなにげにプレイモアしているし。
・PSPをホームシアターに! ステレオスピーカー、バッテリー等も搭載。中高生にとっては結構現実的なツールかも(ナイコ社)。
・ホリ電子のペリボーグ・シリーズ。肉体を拡張する、つまりサイバーパンク思想のコントローラー群。『オレコマンダー』は、高橋名人が指に入れていたという例のバネ(嘘でしたが)と同じアイデアである。
第228回
9月2日「象は出ません」
・『奇談』。原作は諸星大二郎の『生命の木』。Jホラーの勢いはとどまるところを知らず遂に禁断の原作にたどり着いた! というのは大げさか。諸星ファンならおなじみの考古学者・稗田礼二郎を阿部寛が演じる。そして何千もの人々の肉体が絡み合い巨大な一つの生き物のように動くあの表現がしっかり映像化されている。
・東北の隠れキリシタンの里として知られる渡戸村で連続する神隠しの謎を追っていく。その場所のさらに奥地には、村八分にされ隔絶された「はなれ」という集落がある。村人達はその存在を恥として隠している。
・「近親婚が続く山奥の集落」はそのために人々の「知能が低い」、という設定がはっきりと語られる。隠れ里という設定は映画の素材としてはあまりにも魅力的なのだが、被差別部落の描写はずいぶん長い間、日本の映画界でタブーとされてきたものだったわけだ。「Jホラー」「歴史解読ミステリー」という文脈から、そこを切り崩すということだろうか。
9月10日「お菓子であり興奮剤でもある」
・『チャーリーとチョコレート工場』。原作はロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』。そして映像としては’71年の『夢のチョコレート工場』をリメイクしたもの。ただし最新技術によってさらにサイケでキッチュなものとなり、ジョニー・デップの怪演が際だっている。おかげで、カルト性はかえって強まっている。
・ダールは穏やかな文体から刺激的なオチに繋がるアイデア・ストーリーの名手だったが、その作風のままで、子供向けの作品もたくさん残している。美しいファンタジーのふりをして、世界中の少年少女達にきつい刺激物を飲ませてしまってるのだ。冒険物語のヒーローが性病で死んでしまったりとかね。この企み方が僕はとても好きだ。こういう毒は子供達の体内で熟成され、いつか滋養になるのである。
・『チョコレート工場の秘密』はその路線の代表的作品であり、子供の頃に読んでトラウマになっている、という人も多いことだろう。ティム・バートンも、ファンタジーのふりをして既知外映画を見せてくれる監督である。彼等が偉いのは、それをメジャーで堂々とやってしまっているところなのだ。
・ところでガムを噛みながらチョコレートを食べてみて下さい。面白いことが起こります。
9月11日「メイドだらけだ」
・中野系メイドめぐりコース。魔窟・中野ブロードウェイ4階は『ティールーム・アリス』。いい具合に狭いおかげでアットホームな雰囲気。同じフロアに『メイドゲーセンTRF』。メイドさんが客の相手になってびしびし格ゲーやってる。ブロードウェイは近々3階にもメイドカフェがオープンするぞ。
・そして中野駅の反対側にはメイドバー『エデン』。伝説の双子メイドはここにいる。んだけど、出勤日は不定。さらに南下して東高円寺まで行けばメイドマンガ喫茶『ハンドDEメイド』もあり。ボードゲームとかの相手してくれるよ。ただし時間帯によってはメイドさん不在。
・メイドゲーセンではガチャポンでメイド生ポラを売り始めた。いつもあっというまに売り切れてる。いったいこのブームは何の予兆なんだ。
第227回
8月22日「あのトラユマダンス再び」
・『ビー・クール』試写。元チンピラの映画プロデューサー(ジョン・トラボルタ)がインディーズレコード会社の女社長(ユマ・サーマン)と組んで、ショウビズ界の海千山千の人々と丁々発止やりあい、成功をつかんでいく。『ゲット・ショーティ』と『パルプ・フィクション』好きな人は絶対見よう。トラボルタとユマのあの変なダンスもあるよ。
・ゴージャスでカラフルで猥雑で下品なハリウッドの描写がいい。その空気を体現しているトラボルタはもちろんハマり役。そしてザ・ロック、ダニー・デビート、スティーブン・タイラーなどベタな俳優やミュージシャンが多数出演して、皆ほとんど地のままで演技している。それぞれのタレントのバックグラウンドを元にいたるところにちりばめられた楽屋落ちとパロディーの小ネタが楽しくて、映画ファン・音楽ファンはそれを探してるだけでも飽きないだろう。
・今日はあんずミルクでビークール。
8月24日「オタク脳をリワインドし、リニューアルするために」
・『機動戦士ZガンダムII 恋人たち』試写。時々過去のガンダムを見直すってのは自分を巻き戻し、バランスを取るのに良いと思う。
・全盛期のTVシリーズ1クール分をデジタルリマスター&デイレクターズカットによって劇場映画化する……これは『タイトーメモリーズ』と同様、オタク・シルバーマーケット向けの好企画といえる。単に当時の素材を短縮編集しただけでなく、手間をかけて追加新素材を制作し、かつ声も録り直している。
・その作業において、現在の視座からのテーマをはっきり打ち出している。サブタイトルに見て取れるように、Zガンダム3部作の第2部を 富野監督はカミーユやフォウを中心としたラブ・ストーリーとしてまとめているわけだ。このセンスはさすがだなあと思う。
8月25日「映画とゲームがつながっていく」
・『マダガスカル』のPS2版(内容はゲームキューブ版も同じ)をやってみたら、これが非常に良い。ライオン、シマウマ、キリン、カバの仲良し4頭の個性がそのまま再現されている。ストーリーも映画を踏襲しつつ、ところどころわずかに変化していて新鮮な気持ちで遊べる。ゲームとしての新しさや密度はないが、映画気に入った人なら絶対楽しめるはず。キャラゲーはそれでOKなのだ。
・多くのメジャー映画や大作アニメがクソゲーの源泉となっていた過去があり日本ではキャラゲーのカーストはやや低いわけだが、CGアニメってゲームと映画の間を埋める可能性のあるコンテンツだと思う。先入観持たずにプレイしてほしい。