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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。

第219回

6月21日「人里離れた秘密基地?」

・早稲田の本庄キャンパスに行く。東京から新幹線で小一時間、本庄早稲田駅前の広大な敷地に、早稲田大のデジタル時代に向けての研究施設が林立している。

・今、フルデジタル映画の制作環境についてリサーチしているのだが、今日は大学院国際情報通信研究科・河合先生のご厚意により、ここにあるNiCT(情報通信研究開発支援センター)を見学させてもらった次第。巨大なビルの中に情報表現・入出力研究室、CG制作研究室、オンライン編集研究室、オフライン編集研究室、オンライン合成研究室、音声加工研究室、映像評価研究室……等々、各種設備が揃っている。全て「研究室」という名目になっているが、モーションコントロールカメラやモーションキャプチャー完備の撮影スタジオ、インフェルノ(億を超える合成システム)まで入っている編集スタジオ、DLP、5.1ch対応の試写室(といえかミニシアター)等まで完備している、つまりフルデジタル・ハイビジョン対応のスーパースタジオなのである。ギガビットのネットワークにも接続しているし、人工衛星経由でデータを送受信するためのパラボラアンテナもある。これは使いたい。

・それも大御所の大監督連れてくるんじゃなくて、若くて元気なデジタル系クリエーターをたくさん連れてきたいなあ。

6月27日「次世代対応型」

・コミックス新刊、出ました。『プラトニックチェーン 第3巻』(遠野ヤマさん作画のシリーズ)と、『プラトニックチェーン セレクテッド・ストーリーズ 第3巻』(気鋭の作家陣によるアンソロジー)の、2冊。

・プラトニックチェーンの実写映画化も、遂に発表。フルデジタルをキーワードにして、制作から配給までを全く新しいスタイルで貫くということになった。乞うご期待!

6月28日「ジョシカクもブーム直前!」

・女子総合格闘技“スマックガール”。精神的にも肉体的にも強靱な若い格闘家達を中心にジョシカクを愛する人達が集まって行われている興行である。立ち技も寝技もあり、膠着を許さない過酷なルール。ほとんどの試合で流血を見た。選手のレベルはすごいスピードで上がっているようだ。日本女子はそもそも格闘技の素質があるのかもしれない。そして、とてもキュートだ!

・代表の篠さんと久しぶりに会う。この人、ゲームやゲーム関連出版物のプロデュースをやっていたこともある人で、アイドルやアニメ関連ビジネスにも詳しい。日本独特のサブカルチャーは水面下で繋がっているように思える。

第218回

6月7日「虫好きじゃない方ごめんなさい」

・今年は特にあじさいが綺麗ですね。ところがそういう場所に近付くと、緑色の砂嵐のようなものに包まれてしまうことがある。黄色い服を着ている人は特に注意。「アリマキ(アブラムシ)」という昆虫である。

・関東圏全体で大発生しているらしい。市街地にも進出していて、今日などは中野駅ホーム全体が煙って見えるほどの状態だった。黄色にむらがる習性があり、総武線の電車がすっかり緑色になってしまっていた。映画『バグズ・ライフ』ではアリたちのペットとして出演していた虫だ。アリに体液をなめさせる代わりに、天敵から守ってもらうのである。他にもすごく面白い習性をいっぱい持っているので、夏休みの宿題のテーマにぴったりだと思う。

・両性生殖つまり卵を生むだけでなく、いつでも単性生殖つまり体を分裂してクローンを生み出すことができる。主にバラ科の植物から汁を吸う害虫なのだけど、殺虫剤で大量に退治しても、それに耐えて生き残った個体がクローン分裂していきなり増える。そいつらにはもうその薬は効かない、というわけである。だからいくら人間が科学の力で立ち向かっても完全退治は無理なのである。

・しかし今はこいつらに続いて「てんとう虫」が大量発生し始めている。幼虫成虫ともにアリマキの天敵である。まもなく、アリマキの嵐はおさまるはずだ。自然界はよくできている。

6月8日「電車事故に備える」

・電車に乗る時どの位置がいちばん安全か、という話を最近良く聞くでしょう? その論議に対して、これはきわめつけなのではという記述を発見した。

・推理作家・由良三郎氏のエッセイ集『ミステリーを科学したら』(文春文庫)の「用心」という文章。哲学者で横浜市立大の元学長・三枝博音氏のエピソードである。この人は「通勤の電車に乗るときは、決して一番先頭の車両には乗らない。もちろん衝突を避けるからだ」「最後尾の車両にも乗らない。こちらは追突の危険があるから」「座席はいくら空いていても坐らない。万一の事故の時に放り出されて怪我をする恐れがあるからだ」と言っていたそうだ。じゃあどうしているかというと「真ん中の白い棒に掴まって立っている」ということ。

・つまり日本を代表する学者さんが導き出した最も安全な電車の乗り方がこれだということである。話はここで終わらない。この三枝氏が、国電の鶴見事故に遭遇しているのだ。貨車が脱線し、くの字形に曲がって突出した部分が並行して走っていた列車の真ん中に激突したという事故。それに乗り合わせていた三枝氏は、おそらく中程の車両の、真ん中の棒に掴まった状態で、亡くなってしまわれたという。

6月17日「そんな事より」

・「吉野家コピペ」の原作者として有名な新爆さんに会い、小一時間話す。この人のウェッブ日記は相変わらず面白い。

・ちょっとマジに言うと、今のメディア界におけるアマとプロの境界が見えて、すごく面白かった。「すごいアマ」が「だめなプロ」を駆逐していく。そういう時代になっていくと思っている。それがまず、文章の世界に顕れてきている。

・この模様は『ゲームラボ』に、そのうち書きます。ところで新爆さんは「ねぎだく」を食べたことがないらしい。

第217回

6月3日「飲料メーカーに金もらったわけではないが」

・前回、炭酸飲料は一缶の中にシュガースティック12.5袋ぶんの砂糖が入っている。こわー炭酸飲料。というところで終わったが、そこで思考停止している自分にふと気付いた。この、山盛りの砂糖はいったいぜんたい体に悪いのかということを検証しなくてはならないんだった。

・調べてみると、砂糖のカロリーは1グラム4キロカロリー。そんなに低いのか。ごはんとかそばと変わらない。シュガースティック12.5袋ぶんでも、152キロカロリー。ていうと小さなおにぎり一個ぶんくらいである。

・問題の炭酸飲料を10本飲みまくっても一日の必要カロリー(大人の男性で2100キロカロリー)に及ばない。とすると「甘いものは、太りやすい」っていう常識(?)はウソではないか。

・さらに調べる。「砂糖は、直接的に糖尿のもとになる」というのも間違いかもしれない。血糖値を上げる効果は、パンやニンジンの方が高い。ではなぜ、医者も栄養士も砂糖の摂りすぎばかりを責めたてるのか。なぜ、甘すぎるものは体に悪いとされるのか。塩分のきついみそ汁や梅干しやめざしなどの方がずっと不健康なのではないか。
追記*「『砂糖は太る』の誤解」(高田明和/講談社ブルーバックス)という本をめっけた。上記の疑問に対する答えは、ここにかなり詳しい。甘いものは虫歯のもと、という定説も誤解のようである。ていうか僕はこれからも缶コーヒーとコーラでがんがん栄養摂るからね。

6月4日「焼き畑農業の跡地」

・ゲームの本質的な価値について。読売新聞や朝日新聞にコメントを載せていただいた。その効果でいろいろなところから質問の電話。これは流さずに、本気で対応していくべきなのだろう。まず、関連資料や未発表原稿を整理しておくことにした。

・問題が今噴出してきたのは、かつて儲かったお金を調子に乗ってみんな懐に入れてしまった人達のせいもあるとつくづく思う。計画的に育てながら収穫しないものだから、後はもう焼け野原ばっか。それは全部あんた達のものじゃなかった。勝手に使ってはいけないお金だったんだよ。あー。

6月5日「CMスキップ機能反対」

・ゲーム史についての資料整理。昔テレビから録画したビデオテープを大量に見直している。20年以上前のテープもある。当時ムダと思っていた映像が、すごく貴重で役に立つものになってたりする。映画を録画するつもりで時間がずれて録れてしまってたニュース番組とか。映画なんか今ならDVDで手に入るわけで、録画しとく必要はなかったのだ。

・それから、番組よりCMの方が今見るとすごく面白い。最近HD録画でCMスキップしてる人が多いらしいけど、一緒に録っといた方が絶対いいよ。保存用の映像をDVDに落とす時も、アタマとオシリをきっちり決めずに、できるだけ無駄な映像も入れとくといいと思う。

6月6日「梅雨のひきこもり方」

・飼ってるアゲハが羽化直前のため全く外出できないこともあり、ひきこもって資料整理を続けている。その過程で全然別のひらめきがあり、『1979年のゲーム・キッズ』という小説を書きはじめた。次号の『メフィスト』に寄せようと思う。

・タイトーの『スペースインベーダー』がヒットした1978年ではなく、任天堂が『スペースフィーバー』を、セガが『スペースアタック』を出していたような時期。ゲーム業界にそんなまがまがしさのあった時代のことだ。

・当時あなたが場末の喫茶店や不良少年のたむろするインベーダーハウスで遊んでいたのは、もしかしたらタイトー製のスペースインベーダーではなかったかもしれない。そこではインベーダーが下限なくどこまでも降りてこなかったか。名古屋撃ちをしようとすると音のタイミングがズレてしまって慌てなかったか。

・そういうゲーム画面そういう空間そういう時代については、各メーカーの社史からだけでなく、プレイヤーの頭の中からも消え去ろうとしている。それをなんとかありありと思い出して書いてみようとしている。ただしタイトルも、そして内容もやや痛々しすぎるので、単行本に入れる時には変えてしまうと思う。

第216回

6月2日「誰かがちゃんと取り組まなくては」 ・早稲田大にて、授業後、 河合隆史博士とばったり会い、話し込む。テレビゲームが人間の脳に与える影響についての研究を、かれこれ10年以上は続けてる方だ。僕も時々ご一緒させて頂いて […]

第215回

5月30日「ロボットはいかにして子供を作るか」 ・フルCGアニメーション『ロボッツ』試写。『アイスエイジ』チーム、すなわちディズニーへの対抗勢力として急浮上している20世紀フォックス陣営による作品。 ・血肉や自然物が全く […]

第214回

5月18日「大作映画ゲームに思う」 ・ゲーム版『スターウォーズ・エピソード3』(PS2)のサンプル版が届いた。いきなり映画のシーンから始まり、おおっと興奮して見入るとそれがすんなり操作可能なゲーム画面に移っていく。ライト […]

第213回

5月15日「虫を見る人」 ・GWリアルムシキング部活動で山にいた。ら、花粉症がぶり返した。あ゛ー。 ・ところで『ムシキング』はすばらしいけど、今さら思うけどポケモンってさらにこの2段階先を行ってたわけですよね。進化の歴史 […]

第212回

5月1日「ムシキングの女子版は」 ・セガの『オシャレ魔女 ラブandベリー』はムシキングと同タイプの筐体で、カードを集めつつ遊ぶアーケードゲームだ。が、こちらは昆虫の代わりに街中でギャル属性(オシャレまほうカード)を採集 […]

第211回

4月22日「前作ではたしか死んでた」 ・『エレクトラ』試写。マーベル・コミック産の美女ファイターもので、『デアデビル』の脇役からの出世である。マーベルはこういう形式で実写キャラクターもどんどんプロデュースしていく戦略だろ […]

第210回

4月18日「タイトルは終電時刻」 ・深夜の地下鉄を舞台にしたUKホラー『0:34』試写。ホームで終電を寝過ごしてしまった女性。その後に来た電車につい乗り込んでしまう。ところが運転手は既に惨殺されていた。そして、地下の世界 […]