風俗嬢は勃たずに落ち込む私に言った「すぐに謝る男の人、あんまり好きじゃない」――爪切男のタクシー×ハンター【第十八話】
社長からもらった五万円を握りしめて風俗店を探す。さすがは渋谷、元旦から営業している風俗店はたくさんあった。いつもよりちょっとだけ高級なお店を選び、ホテルで風俗嬢と合流する。その日の風俗嬢は、少し吊り上がった目が特徴的で、外国人のような整った顔をしており、髪型は頭の上でお団子の形で結んでおり『ローマの休日』の頃のオードリー・ヘップバーンによく似た風貌である。元旦からオードリー似の風俗嬢を引き当てるとは、確かに今年はいい年になりそうな予感がする。
私の趣味嗜好として、風俗嬢とはエッチなことをするよりも、プロレスごっこをしたり、部屋の中でかくれんぼをしたり、ホテルの窓から東京の空に向けて一緒にしゃぼん玉を飛ばしたりして遊ぶのが好きなのだが、その日の私はいつもと少し違った。昨夜の彼女との喧嘩で心が疲れていたのか、珍しく人恋しさを感じており、オードリーの身体を激しく求めてしまった。
だが、どれだけオードリーの身体を触りあっても、私のチンコがそそり立つことはなかった。それなりに興奮はしているのだがどうしても勃起しない。あれやこれやと一生懸命してくれているオードリーに申し訳ない。私の失恋を笑い話にする為に五万円をくれた社長にも申し訳が立たない。自分という男が本当に情けない。私はオードリーに謝罪して、一緒にベッドに横になった。
「お兄さん~気にしちゃダメだよ? こんな時もあるからね?」
「本当にごめんね……」
「昨日お酒飲みすぎたとかじゃないの~?」
「元旦からこんなんでごめんね……」
「……」
「ごめんね……」
「お兄さん! ちょっと謝り過ぎだよ!」
「え……」
「すぐに謝る男の人、あんまり好きじゃない」
「そうなの……?」
「ちゃんと話をしてくれてない気がする」
「……」
「自分だけで受け止めて、自分だけ大人のふりして、自分が謝ればいいやって感じがして嫌」
「……そっか」
そんなことを言われたのは初めてだったので面食らってしまった。オードリーの言葉の全てに納得はできなかったが、自分に足りない部分をズバッと指摘された気がして、さらに落ち込んでしまった。私のしょぼくれた顔を見たオードリーが口を開く。
「ちょっとちょっと~今度は落ち込み過ぎだし!」
「……」
「しょうがないな~元気出して! 舐め舐めしてあげる!」
そう言ってオードリーは、私の目、鼻、乳首、性器、足の指とあらゆる所を丹念に舐めてくれた。その健気さが愛おしかった。相変わらず私のチンコが勃起することはなかったが、私はオードリーの頭のお団子の部分を優しく撫で続けた。すると、私の耳たぶを舐めていたオードリーが声を上げた。
『死にたい夜にかぎって』 もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー! |
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