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風俗嬢は勃たずに落ち込む私に言った「すぐに謝る男の人、あんまり好きじゃない」――爪切男のタクシー×ハンター【第十八話】

「お兄さん……耳たぶに穴空いてるじゃん! ピアスとか付けるの?」 「あ……学生の時に片耳だけ付けてたことあるんだよね」 「………」 「……?」  オードリーはしばらく黙っていたが、堪え切れなくなり大声で笑い始めた。 「ピアスとか似合わね~~~!!」 「……失礼だな」 「しかも片耳だけ付けてるとか超ウケる!! それオシャレな人がすることだし!!」 「そこまで笑われるとちょっと傷つくな~」 「ごめんごめん、ねぇねぇ……この穴ってまだ空いてるよね? 久しぶりにピアス付けてみない?」 「え……うん……まぁ別にいいけど」 「じゃあ私の予備のピアス付けてあげるね!」  そう言って自分のカバンからピアスを取り出したオードリーは、私の閉じかけのピアス穴を少しずつ開通させていった。程なくして、私の左耳に金色の星の形をしたピアスが輝いた。その姿を見たオードリーは「やっぱり似合わね~!!」と大爆笑した。あまりに大声で笑うので、その笑い声につられて私も大声で笑ってしまった。 「私、こんなに笑ったの久しぶりだ~!」 「笑ってもらえたのならよかったよ」 「あっ! 今日って元旦だから……これ初笑いだ!」 「そうなるね~」  ピアスを付けただけでこんなに笑われてしまうことには到底納得がいかないが、お団子頭の女の可愛い笑顔を見れたのだから良しとしよう。一緒に大笑いしたことで二人の距離感が一気に縮まったのを感じた私は、自分が恋人と別れそうになっている身の上を相談した。オードリーは、先ほどとは打って変わって真剣な顔で私の話を聞いて、ゆっくりと口を開いた。 「きっとね、怒って欲しかったんだよ」 「私に?」 「しちゃダメなことしても怒られなかったら不安になるよ。私のことなんてどうでもいいのかなって」 「そういうもんなのか……」 「何しても怒らない人なんて……私は逆に怖いよ」 「怖いか……」 「まぁ……怒るしか能のないダメ男としか、私が付き合ってこなかっただけかも~」 「……」 「関係の無い他人はダメだけどさ、自分の大事な人になら少しぐらい傷つけられたって我慢できるよ」 「そういうもんか……」 「お兄さんって他人に興味無さそうだから、彼女さんはわざと傷つけたくなったりするかもね。愛情確認でね」 「他人に興味が無さそうってのはみんなに言われるね。本当はそんなことないんだけどね。他人には伝わらないよ」 「今、傷ついて心に穴が空いてますってのが、ピアスの穴みたいに分かりやすく相手に見せれたらいいのにね」 「あはは」  自分の心の中のモヤモヤしていた霧が少しだけ晴れた気がした。オードリーに感謝の気持ちを伝えて、二人の甘いひと時は終わった。ホテルの部屋を出ていく前に、オードリー頭のお団子をほどいてもらい、髪の毛をおろした素敵な彼女にキスをして別れた。
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帰りのタクシーの車中、ピアスが付いたままなのに気づいた。
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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