更新日:2018年04月06日 19:53
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美しく可憐な女子高生が私の高級自転車を盗もうとしていた――爪切男のタクシー×ハンター【第十七話】

終電がとうにない深夜の街で、サラリーマン・爪切男は日々タクシーをハントしていた。渋谷から自宅までの乗車時間はおよそ30分――さまざまなタクシー運転手との出会いと別れを繰り返し、密室での刹那のやりとりから学んだことを綴っていきます。 美しく可憐な女子高生が私の高級自転車を盗もうとしていた――爪切男のタクシー×ハンター【第十七話】「自転車は自分に合った自転車に乗るのが良い。恋人と同じ自転車に乗るのはもっと良い」 メルマガ編集長とエロ動画サイト運営という二足の草鞋を履く働き方をしていた頃、日々のストレスを暴飲暴食にて解消するようになった私の身体は、それはそれは醜く太り始めた。上京直後に50キロだった体重は80キロまで増加し、ヒョロッとしたモヤシ体形だった四国の田舎者は、渋谷の路上で黒人にぶつかられても微動だにしない屈強な都会の戦士に成長した。 私の健康を案じた社長から、自転車通勤を強く勧められた。自宅の中野から職場がある渋谷まで、自転車での所要時間はおよそ40分だ。正直面倒臭かったが、社長が「ビアンキ」とかいう外国有名メーカーの高級自転車をプレゼントしてくれたので、そこまでしてくれるならばとしばらくの間は自転車通勤をすることにした。 よく言われるように、年長者の言葉には素直に従うものである。最初のうちは疲労しか感じなかった自転車通勤も、徐々に慣れてくると非情に有意義な時間に変わった。渋滞に巻き込まれずにスイスイと進める快感、電車の時刻や乗換を気にしないでいい気楽さ、面白そうなお店を見つけたらフラリと立ち寄ることのできる自由さ。その全てが気持ち良かった。
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しばらくすると、たまの休日でさえも…
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死にたい夜にかぎって

もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー!

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