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小池知事が掲げる“復興五輪”関連事業が、逆に被災地の生活関連事業を圧迫!?

小池百合子都知事

 小池百合子・東京都知事は2月9日、東日本大震災の被災地である宮城県沿岸部を訪れ、五輪選手が駆けつけたフラッグツアーイベントに参加。“復興五輪”をアピールした。  小池知事の被災地訪問は、震災直後に岩沼市の小学生にランドセルを贈って以来の6年ぶり。最初の視察地・岩沼市では、その小学生と再会。「今、何年生かな?」との問いに「6年生です」と答えるなどのやりとりをしながら、「新しいランドセルをもらってうれしかった」という感謝の手紙を小学生から受け取り、知事が目を潤ませる場面もあった。  続いて向かったのが、同じく震災で大きな被害を受けた石巻市。亀山紘市長らの説明に耳を傾けながら、市内を見渡すことができる高台の日和山公園を訪れた。  しかし、眼下に広がる石巻港周辺は更地がほとんどで、建設が進む防潮堤も途切れ途切れになったままだ。震災から6年も経とうとしているのに、ランドセルを贈った小学1年生が卒業目前になった今でも、復興は未だに道半ばの状況なのだ。  視察後の囲み取材で、小池知事は“復興五輪”へかける思いを語った。 「沿岸部の復興はこれからというようなところもありますし、まだまだ被災をされた方々も別のところにお住まいになっていたり、中には東京の方にもいらしておられますので、公営住宅などで支援ができるように、いま期間の延長など工夫をしているところです。オールジャパンで取り組む課題だと思っています」

五輪関連事業の余波で復興事業に悪影響が

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小池知事が復興状況確認で訪れた、高台から見た石巻市。6年近くたっても更地が多く、復興は道半ばだ

 しかし小池都知事が提唱する“復興五輪”が被災者を苦しめている側面もある。被災地では巨大防潮堤や「三陸自動車道」(高速道路)などのハード中心の大型復興事業、そして東京でも五輪関連事業が増加した結果、資材人手不足による工事費高騰や入札不調を招き、小規模な生活関連事業が遅れる事態を招いている。  それは数字にもはっきりと表れていた。宮城県土木事業担当課は「公共工事設計労務単価変動グラフ」を差し示し、建設業界の人件費が1.5~2倍に上昇している状況を説明してくれた。震災直後の2011年は普通作業員の労務単価が1万1100円だったが、5年後の2016年には1万7500円と1.5倍以上に増加。特に人手不足の型わく工は1万6700円から3万円へと2倍近くに跳ね上がっていた。 「入札不調も震災前の2010年は3.2%でしたが、震災直後の2011年度は22.6%に急増。2014年が21%、2015年も19.4%と解消されていません。東京五輪関連事業や熊本復興事業など他地域での公共事業が増えて、被災地での入札不調が解消しないということでしょう」(県契約課)  入札不調や工事費高騰は、民間の事業にも悪影響を及ぼす。防潮堤見直しを訴える「赤浜の復興を考える会」の川口博美会長(岩手県大槌町)はこう話す。 「仮設住宅を出て新しい住宅を建てようとしたら、当初の見積もりの5割増になって新居建設を断念した人もいます。防潮堤など大型復興事業よりも、最も大切な生活関連事業に力を割いてほしい」
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都知事にも三陸地方の現状を知ってほしい
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