雑学

自衛隊員が制服を着て通勤できないワケ



 さらに、自衛官は一般人から暴行を加えられても、容易に暴力を振るわないように教育されています。正当防衛でも暴力をふるうと懲戒を受ける可能性が高く、それを知っている自衛隊をよく思わない人たちが、自衛官を襲撃するような事件もありました。1971年には新左翼によって警備中の自衛官が朝霞駐屯地で殺害されています。自衛官は自衛官というだけで人権を侵害され、反対派の暴力をうけてきた歴史があるのです。

 だから、教育隊の新人自衛官は制服を着ているために、狙われないように集団で行動するわけです。専守防衛どころか、正当防衛ですら問題視されかねないのが自衛官の日常です。

 警察官は警察官を狙って襲撃すれば、公務執行妨害などの罪を問えますし、現行犯逮捕ができます。自衛官はそういった権限を持ちません。

「制服のときは突き落とされないように、電車のホームの前には絶対に立たない」と言っていた幹部もいました。突き落とすほどのことはなくても、自衛官だとわかると議論を吹っ掛けたり、人殺しと叫ばれたりすることもあるようです。東日本大震災以降、災害派遣での自衛隊の役割が報じられ、風当たりはかなりよくなりましたが、それ以前は自衛隊だとわかると石をぶつける人もいたそうです。

 自衛官の身分はいまだに低いままで、今も自衛官に対して非人道的な言葉の暴力をふるう人たちがいます。自衛官が制服で日常風景のなかにいる社会はまだまだ遠いのです。

 しかし、日本には数か所自衛隊のパレードを町ぐるみで行える駐屯地と町の関係がとてもいい地域があります。福知山などは毎年市中パレードを市民と自衛隊が楽しみにしています。そういった町では自衛官が制服で街中にいる風景もほかの町より多くみられます。自衛官の身分について私たちはまだまだ考えないといけない状態なのです。
 
 自衛官が制服で通勤できる時代になれば、きっと日本の国防意識は変わっていることと思います。自衛官はこれまで世間に攻撃される対象で自衛官は反撃できないという身分でした。日本国のこれまでの安全保障の状況がそのままここに凝縮されています。国を守る国防を日陰者にしてしまったことを反省しなくてはならないと思います。<文/小笠原理恵>

国防ジャーナリスト。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰
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