更新日:2022年08月30日 23:52
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あなたの天皇観はまちがっている!? 倉山満が「5つの誤解」を解く

【誤解4】女系を認めない皇室典範は「男尊女卑」だ!?

あなたの天皇観はまちがっている!? 倉山満が「5つの誤解」を解く倉山:これはむしろ逆だろう、と私は考えています。詳しくは以前の記事「『女性天皇』賛成派は愛子様に生涯独身で通していただくつもりか?」を読んでもらいたいと思いますが、男系でつながる皇室はむしろ「男性排除」の論理で成り立っています。女性は民間人でも皇族の方と結婚すれば皇室に入れますが、男性はそうはいきません。男性が民間人の場合、皇族の方と結婚されても民間人のままです。 ──結婚相手の女性皇族のほうが、皇籍を離れることになりますね。 倉山:そうです。美智子様や皇后陛下、雅子様が皇太子妃になられても、眞子様と結婚される予定の小室圭さんが皇室に入ることはない。ゆえに「男性排除」の論理だと言っているわけです。 ──なるほど。 倉山:愛子様の女帝に関する議論についても、誤解があると思います。我が国では、奈良時代に民間人の道鏡が皇位を狙って以来、「女帝は生涯独身か未亡人のみ」とする不文法が確立しました。女帝を認めていない現在の皇室典範を「男尊女卑」だと叫ぶのは勝手ですが、もし愛子様が御即位された場合、「生涯独身」を求められるという歴史があることをきちんと理解しているのでしょうか。甚だ疑問です。

【誤解5】「上皇」という尊号は「元天皇」だけに与えられるもの!?

倉山:特例法の成立により、天皇陛下は退位後、200年ぶりの「上皇」となることが決まりました。この「上皇」という尊号は、天皇を辞めた方に贈られる「太上天皇」の略ですが、歴史上には天皇にならなくても「上皇」になった方が存在します。その方々を「不登極帝(ふとうぎょくてい)」と呼びます。 ──聞き慣れない呼び名ですね。 倉山:鎌倉時代の後高倉上皇や、室町時代の後崇光上皇などが「不登極帝」です。死後に追贈された、陽光上皇と慶光上皇もいらっしゃいます。いずれも天皇の父君です。天皇にはなっていないので、歴代天皇にはもちろん数えません。  日本人なら誰もがその存在を知りながら、よく理解できていない事柄も多い皇室関係。「じゃあ、よく理解できるようにしましょう」(倉山氏・談)との気持ちから生まれた『日本一やさしい天皇の講座』は、全国書店ほかで絶賛発売中だ。 【倉山満】 1973年、香川県生まれ。憲政史研究者。著者シリーズ累計35万部を突破したベストセラー『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』『嘘だらけの日露近現代史』『嘘だらけの日英近現代史』『嘘だらけの日仏近現代史』のほか、保守入門シリーズ『保守の心得』『帝国憲法の真実』など。2017年6月、待望の新刊『日本一やさしい天皇の講座』を上梓 <取材・文/ツクイヨシヒサ>
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日本一やさしい天皇の講座

天皇はいかにして権力を手放し立憲君主になったのか。そして今回、論点となった譲位、女系、女帝、旧皇族の皇籍復帰の是非について、すべて「先例」に基づいて答えることで、日本人として当然知っておくべき知見を集約した一冊。

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