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映画『エイリアン』のデザイナーがジャケを手掛けた邦楽アーティストと「オタクメタル」の共通点

「オタクメタル」のフォーマットを作った海外へヴィメタル3つの潮流

 さて、前置きが長くなったが、今回は、「オタクメタル」のルーツとなる部分の海外へヴィメタルの歴史を述べてみたい。  筆者はかつて、「2ちゃんねらー」だったという黒歴史があり、『2ちゃんねる公式ガイド2004』(コアマガジン)のハードロック・へヴィメタル板の項目に、「良コテ」として掲載されたこともある。インターネット黎明期の00年代前期、筆者は2ちゃんねるのメタラーに対して、オタク臭を感じていた。ハードロック・へヴィメタル板にはメロスパーが多かったし、おそらく同人メタラーもそれなりに集まっていたのかもしれない。  同人メタルでは、マイナー調の臭いメロディ(“クサメロ”)、シンフォニック・アレンジ、疾走するリズムといったキラキラドコドコしているパターンがもっとも多く聴かれている。このようなオタクが好みそうなへヴィメタルを、筆者は「オタクメタル」と称している。では、一体どのような経緯でオタクメタルのフォーマットはできたのだろうか?

クサメロのルーツ、ジャーマン・メタルの雄HELLOWEEN

 クサメロのルーツは、80年代半ばまで遡る。その起点はドイツ出身のHELLOWEENの5曲入りミニ・アルバム『Helloween』(1985年)だ。正統派ヘヴィメタルでありながらもスラッシュメタルと比肩しうるパワフルでスピーディーな音楽性と、男児向けアニメの主題歌のようなメロディが融合したもので、ここにジャーマン・メタルのひな型が誕生した。  カイ・ハンセンのヴォーカルは、魔女が風邪を引いたような声とされ、バンドのウィーク・ポイントだったが、マイケル・キスク加入後のアルバム『Keeper Of The Seven Keys part.1』(1987年)によって、HELLOWEENは世界的な成功をおさめた(しかし筆者は、キスクよりも初期のカイ・ハンセンの方が好みだったりする)。  その後もドイツからは、BLIND GUARDIANやHEAVENS GATEなど後続バンドが続々と登場した。またHELLOWEENを脱退したカイ・ハンセンがGAMMA RAYを結成し、ドイツのヘヴィメタルはHELLOWEENとGAMMA RAYの2トップ体制になっていった。  90年代に入ると、後続のHEAVENS GATEが『Livin’ in Hysteria』(1991年)、BLIND GUARDIANは『Somewhere Far Beyond』(1992年)を発表し、どちらも最高傑作品を提示した(後者のBLIND GUARDIANは、一つ前のアルバムも同程度に高い評価を得ている)。  この後、BLIND GUARDIANはクラシックやオペラ、民族音楽を取り入れた濃密な音世界を構築していくが、HEAVENS GATEは、「次の扉」を開くことができなかった。小物臭漂うHEAVENS GATEが、当時、洋楽へヴィメタル雑誌『BURRN!』(シンコー・ミュージック)の表紙を飾ったことは、メタラーの間でネタとなっている。  ジャーマン・メタルは特に日本のメタラー(メロスパー、クサメタラー)の間で人気が高く、日本のレコード会社によりドイツの同系統バンドの青田刈りが進み(筆者はATTACK、IRON SAVIORあたりまで買い支えた)、のちのメロディック・スピード・メタルの土台となった。

「某ジャーマン激推しの音楽評論家」に乗せられて買い集めたジャーマン・メタルのCD(筆者撮影)

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日本で人気のサブ・ジャンル“メロスピ”と“シンフォブラ”
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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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