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映画『エイリアン』のデザイナーがジャケを手掛けた邦楽アーティストと「オタクメタル」の共通点

映画『エイリアン』のデザイナーがジャケを手掛けた邦楽アーティスト

 ところで、シンフォニックメタルの始祖はTherionである。前述の「Therion」のバンド名は、スイスのバンドであるCELTIC FROSTの2ndアルバム『To Mega Therion』(1985年)からきている。CELTIC FROSTは、VENOM、BATHORYと並んで、ブラックメタルのパイオニア的存在である。

CELTIC FROSTの1stアルバム『To Mega Therion』(1985年)。ジャケットは、映画『エイリアン』のデザインでおなじみのスイス人画家・デザイナーのH・R・ギーガーが手掛けている。

 スラッシュメタルは汚くて貧乏くさいイメージがあったが、シンフォニック・テイストや女性ヴォーカルを導入して独自の暗黒芸術を構築した同作が、後の美しく豪華なシンフォブラの起点となった。  『To Mega Therion』のジャケットは、映画『エイリアン』のデザインでおなじみのスイス人画家・デザイナーのH・R・ギーガーが手掛けている。CELTIC FROSTの中心人物であるトム・ガブリエル・フィッシャーは、ギーガーのアトリエでアシスタントをしていたようで、数多のミュージシャンの中でも最もギーガーに近い存在だろう。ギーガーは、CARCASS『Heartwork』(1993年)や、X JAPANの ギタリストHIDE(ソロ名義はhide)の初のソロアルバム『HIDE YOUR FACE』(1994年)などの重要アルバムのジャケットも手掛けている。

hideの初のソロアルバム『HIDE YOUR FACE』(1994年)のジャケットもH・R・ギーガー。

「オタクメタル」のルーツは、CELTIC FROST

 このように見てくると、90年代に拡散したヘヴィメタルの手法は、80年代半ばに誕生していたことが分かる。そして、クサメロとシンフォニックの要素、その組み合わせによって生み出されたヘヴィメタルは、オタク・シーンにも波及し、大きな広がりを見せている。というわけで、「オタクメタル」のルーツは、とりあえずCELTIC FROSTとしておくことにしよう。
(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)
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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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