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ふかわりょうがテレビを大事にするワケ「僕はSNSと親和性が高くない」

違和感を抱くことは気持ちが動き出す原動力になる

ふかわりょう――「世の中と足並みがそろわない」が強みになることはありますか? ふかわ 世の中がフラットに見えないのは、気持ちが動き出す原動力になると思います。特に、なにかを生み出そうとする人にとっては。たとえば、芸人はささやかな日常の中に心の機微を感じて、笑いに変える仕事です。誰よりも傷つき、誰よりも平坦なものに起伏を感じられる人間じゃないと、成り立たない仕事ですから。 ――芸能界といういろんな人の視線を浴びる世界では、ふかわさんのような人との違いに敏感な繊細な人だと生きづらいのではと思ってしまいます。 ふかわ 人前に立てば、いろんな言葉や視線も向けられます。特にお笑い芸人は、笑いで自分の存在価値を見出そうとするくらいの人たちなので、ピュアだし、ちょっとしたことで傷つきやすい人が多い。昔は僕も傷ついていましたし、今でも傷つくことはあります。 昔からそんな自分の脆さや弱さを知られたくなかったので、ひたすら強がってきました。いまは、「他人が自分に同意して認めてくれなくてもいい。年を重ねるごとに、繊細さを強さに変換させられるようになったんでしょうね。繊細ながらも、図太くいたいです。

余生は海辺で羊たちと暮らしたい

――芸人、MC、DJ、作家と様々なキャリアをお持ちのふかわさんですが、ご自身の今の肩書きを選ぶとすると? ふかわ 「肩書き」は自分にとっては深いテーマですね。『世の中と足並みがそろわない』は、22編のエッセイから成るのですが、もし23編目を書くならそのテーマで書きたいと思っていたくらいです。肩書きって、どれをとっても違和感がありますよね。 僕の場合、「お笑い芸人」も、「タレント」も少し違うような気がします。何物でもない状況に憧れますけど、そうもいかない。そう考えると、ずっと一生、自分の肩書きにはしっくりしないままなんでしょうね……。いつか「このふかわっていう人は、いったい何をした人だったんだろうね」と言われながら死んでいくのだと思っています。 ――最後に、今後の人生におけるプランはありますか? ふかわさんといえば、よく結婚の話が話題に上がりますが、そのあたりは……。 ふかわ 明確なビジョンはあえて持たないようにしています。結婚に関しても、別に人との関わりを断ちたいわけではないし、自分に奥さんがいてくれてもいいんです。僕が50代を迎えたら心境が変わるかもしれないし、大きな病気を患ったりしたとき、誰か一生一緒に添い遂げたいと思う人に出会うかもしれません。今の時点ではわからないから、あえて決めない。 唯一、ぼんやり考えているのは、余生はアイスランドの海辺で羊たちと暮らしたい……ということですかね。ただ、これもあくまで絶対にそうなりたいというわけではなく、「なんとなく、そういうのもいいな」という感じですけどね(笑)。 ふかわりょうふかわりょう 1974年、神奈川県生まれ。1994年、慶應義塾大学在学中にお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いヘアターバン姿で「あるあるネタ」をつぶやく「小心者克服講座」で人気を博す。現在は『5時に夢中!』のMC、『ひるおび!』のコメンテーターを務める。エッセイ集『世の中と足並みがそろわない』が好評発売中 <取材・文/藤村はるな 撮影/山田耕司>
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世の中と足並みがそろわない

ふかわりょうの不器用すぎる歪な日常。

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