◆子供たちに「逃げ場所」を 　鎌倉市図書館のツイートが素晴らしいのは、そういう「誰が考えても安全な方法」から遠く離れて、「内容のあること」をつぶやいたことです。一人の女性司書の言葉だそうですが、本当に素敵だと思います。 　そして、このツイートを削除しなかった図書館長も同じく素敵です。 　このツイートが素晴らしい二つ目の理由は、図書館を「逃げ場所」としてちゃんと定義したことです。 　このツイートに対して図書館は、こんなつぶやきをしたんだから、学校をさぼった子供たちに対するフォローができるんだろうなというような批判が来たそうです。子供をほったらかしにすれば、不登校助長につながるという指摘です。 　ですが、何も言わず、声もかけず、放っておくからこそ、「図書館」は逃げ場所になれるのです。 　一見、逃げ場所のふりをしながら、「根掘り葉掘り聞かれる場所」ならば、子供たちは絶対に来ないだろうと断言できます。 　図書館とは本来、そういう場所なんだ、という言い方もできますが、そもそも「フォロー体制ができないなら、『逃げ場所』として名乗りを挙げてはいけない」なら、子供たちが生き延びられる場所は、うんと少なくなるでしょう。 　9月1日が、子供たちの自殺率が一年で最も高まる、ということから、NHKの番組の取材を受けました。本当にいじめられている時は、「自分は何をしたらいいのか」という適正な判断ができません。 　ただ、現実が嫌で、でも、どうしたらいいかわからず、日常を繰り返すしかないのです。 　そこで、泣いたり抗議したり大人に現状を訴えたりできるのは、まだましな子供たちなのです。 　本当に追い詰められている子供は、何を始めていいのかわかりません。そういう時に、「手軽な」「逃げ場所」を、ひとつひとつ挙げていくことは、「死ぬ可能性」を減らします。「図書館」のツイートに対して、「僕は『楽器売り場』に助けられました」とツイートしている人がいました。一日、楽器をいじりながら時間をつぶしたのです。逃げ場所の情報は多ければ多いほどいいのです。 ※写真はイメージです ●「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA！にて連載中。連載をまとめた最新刊『この世界はあなたが思うよりはるかに広い』も好評発売中