更新日:2022年07月08日 15:24
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なぜ舛添都知事の無駄遣いをだれも止めなかったのか?

写真/ Chatham House

私的な支出を謝罪

<文/教育評論家・野田数 連載第2回>  舛添要一都知事が強烈な批判にさらされている。  前回の都有地を韓国学校へ貸し出す問題(※)に続き、今回は、政治資金で家族旅行に行っていたことや公用車で毎週温泉に通っていることが問題視されている。新聞、テレビなどで、連日のように批判され、コメンテーターのみならず、知事経験者や文化人、芸能人からも非難されるようになった。今回も「文春砲」の威力は凄まじく、舛添知事は5月13日の記者会見で釈明会見を行い、収支報告書に私的な支出が混じっていたことを謝罪した。 ※HARBOR BUSINESS Online(批判が集まる舛添都知事の都市外交――石原、猪瀬、両前任者との比較で考える)より  このたびも、他のメディアが取り上げていない観点から、舛添問題について批評したいと思う。

そもそも都議会が都知事をチェックすべき

 みなさん疑問に思われるかもしれないが、なぜこれだけ舛添知事が好き放題やれるのだろうか。なぜ都議会から批判の声が聞こえないか、理解できるだろうか?  いわゆる二元代表制というのは、知事(行政)と都議会(政治)で成立しており、行政のチェック機能を果たすのは議会の役割なはずである。  都有地を韓国学校に貸し出すとの方針を打ち出した時の方が都議会からの批判が多少なりとも聞こえていた。しかしこの度のように、公用車や政治資金になると、まるで聞こえてこない。なぜか?  それは都議会議員も、公用車を乗り回し、政治資金を私的に使用し、公費で無駄な海外旅行を行っているからである。

都議会も都庁職員も怖れた石原元知事と猪瀬前知事

 ここで舛添知事を歴代知事と比較してみようと思う。  石原慎太郎元知事は人気が抜群で選挙に強く、実績も十分。猪瀬直樹前知事にしても石原氏のようなカリスマはないにせよ、五輪招致をはじめ都政への功績は多く、選挙は圧倒的に強かった。仮に都議会が、彼ら2人のような知事に敵対すれば、世論を敵に回すことになる。だから、議員達は最終的に両知事には折れざるを得なかった。  ところが舛添知事には、カリスマも実績もなく、選挙もそれほど強くない。議会側にすれば、与しやすい知事ということである。  それでは、歴代知事は都庁職員からどのように見られていたか。石原氏は、ひと言でいえば怖れられていた。行政改革の手腕に長ける猪瀬氏は、役人からすれば厄介な存在。敬意を持ちながらも、仕事が増えて大変なので不満も抱かれていた。

「裸の王様」の舛添知事

 舛添知事は前任者2人のように既得権益に斬り込むような真似はせず、これまで仕事らしいことを何もしていないので、敬意も敵意も持たれていない。はっきり言って無風状態だ。足を引っ張ってやろう、とさえ思われていない。だからこそ、舛添氏は内部から足を引っ張られず、勘違いをし、「裸の王様」状態なのである。  前任知事2人は公用車で温泉に行ったことはないし、公金の公私混同などはしない。一方で、舛添知事は税金の使い方がメチャクチャだ。彼が力を入れている都市外交にしても、石原都政では「アジア大都市ネットワーク21」を立ち上げ、多都市間で事業を行っていた。猪瀬氏は副知事時代からトップセールスを行い(副知事でトップセールスという言葉は妥当かわからないが)、例えば東京都の水道、下水道などインフラシステム等を積極的に外国の都市に売り込んでいた。
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