山田ゴメスの俺の恋を笑うな
チッ!
横断歩道を歩いていると、
あっち側から急ぎ足で駆けてくる
黒いジャンパーを着た、
小太りで髪がやたら乾いた
20代後半くらいのオタク風の男と、
ぶつかりかけた。
右によけようとすると、
その男は左、つまり向かって右によけようとした。
次に左によけようとすると、
その男も右、つまり向かって左によけようとした。
男同士で手をつながず社交ダンスを踊るような
恰好になってしまったわけだが、
すると、その男は間違いなく
チッ!
と舌打ちしながら、私を通り過ぎていった。
猛然と腹が立って、思わずその男のほうを振り返った。
私のほうは、右手のひらを立てて
「失敬!」と謝ったにもかかわらず、だ。
男はしれっと私に背を向け、
横断歩道を渡りきって、
右に曲がり去っていったのだが、
そのときの私は、おそらく人でも殺しかねない
ものすごい形相だったに違いない。
舌打ちほど、
人の神経を逆なでる
行為はないと思う。
原稿催促の電話で
「ちょっと風邪引いちゃってまだできてないんですよー」
などと言い訳して、
編集者から
チッ!
なんてされた日には、
人間失格
の烙印を押されたかのごとく、
底なしに落ち込んでしまう。
自動改札でSuicaが反応せずに、
バタンとストッパーが閉じたときも
後ろの人からよく、
チッ!
という声が漏れ、たいそう気分が悪い。
もし私が国会議員になったなら、
人前で舌打ちしたヤツは
問答無用で舌を抜く
といった法案を国会に、ぜひとも提出してみたい次第である。
2012.02.03 |
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