知人の愛(上)

 あなたは刃物による殺傷沙汰に出くわしたことがありますか?

 私は未遂なら一度ある。

 あれは梅雨の蒸し暑い頃だった。

 ある女性の家で、私は彼女がつくってくれたスパゲティー・ナポリタンパンツ一丁で食っていた。

 たしか、パンツは真っ赤で股間の中心部に「♂」のマークがプリントされたビキニタイプだった。

 その彼女には、しつこく付き纏っている男がいて、その彼は私の友人とまではいかない知人のカメラマンだった。その知人のストーカーまがいの行為に困り果てた彼女が私に相談を持ちかけ、相談に乗っているうちにねんごろになってしまった、といういきさつである。

 この日もわざわざ彼女の家まで行って相談に乗っていたら、急にムラムラしてきて我慢できなくなって、事が済んだらお腹がへったので、スパゲティーならつくれるよ、といった流れで私はパンツ一丁でスパゲティー・ナポリタンを食っていたのであった。

 食っていたら、玄関のドアをドンドンと鳴らす音がした。オートロック式ではない古いマンションだったので、とりたてて不自然さは感じなかった。

 下着姿にグレーのフリーツを羽織って、ジッパーを胸の谷間あたりまで上げながら、
彼女はドアを数センチ引き、ハイ……と、そのすき間から外を覗こうとする。

 ベッドのわきに置いてある目覚まし時計を見ると、午後の10時を過ぎていた。

 最近の宅配便業者はこんな時間でも動いているんだなあ、などとぼんやり考えていたら、
玄関がバーン!と乱暴に開き、その先に男が一人立っていた。

 私の知人であり、彼女にストーカーまがいに付き纏っているカメラマンだった。

(つづく)

2010.12.24 |  2件のコメント

PROFILE

山田ゴメス
山田ゴメス
1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など
『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)
『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)
OL、学生、フリーター、キャバ嬢……1000人以上のナマの声からあぶり出された、オヤジらしく「モテる」話し方のマナーとコツを教えます

“知人の愛(上)” への2件のフィードバック

  1. ガッツ より:

    面白いっすねぇ。先生、早く(下)を!

  2. ごめす より:

    ご声援、どうもありがとうございます! この「世界の名作シリーズ」は、かなり気合いを入れて書いているので、けっこう時間がかかってしまいます……完成し次第、すぐアップしますね。ブログ用語で「アップ」って間違ってます?(ゴ)

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