山田ゴメスの俺の恋を笑うな
知人の愛(上)
あなたは刃物による殺傷沙汰に出くわしたことがありますか?
私は未遂なら一度ある。
あれは梅雨の蒸し暑い頃だった。
ある女性の家で、私は彼女がつくってくれたスパゲティー・ナポリタンをパンツ一丁で食っていた。
たしか、パンツは真っ赤で股間の中心部に「♂」のマークがプリントされたビキニタイプだった。
その彼女には、しつこく付き纏っている男がいて、その彼は私の友人とまではいかない知人のカメラマンだった。その知人のストーカーまがいの行為に困り果てた彼女が私に相談を持ちかけ、相談に乗っているうちにねんごろになってしまった、といういきさつである。
この日もわざわざ彼女の家まで行って相談に乗っていたら、急にムラムラしてきて我慢できなくなって、事が済んだらお腹がへったので、スパゲティーならつくれるよ、といった流れで私はパンツ一丁でスパゲティー・ナポリタンを食っていたのであった。
食っていたら、玄関のドアをドンドンと鳴らす音がした。オートロック式ではない古いマンションだったので、とりたてて不自然さは感じなかった。
下着姿にグレーのフリーツを羽織って、ジッパーを胸の谷間あたりまで上げながら、
彼女はドアを数センチ引き、ハイ……と、そのすき間から外を覗こうとする。
ベッドのわきに置いてある目覚まし時計を見ると、午後の10時を過ぎていた。
最近の宅配便業者はこんな時間でも動いているんだなあ、などとぼんやり考えていたら、
玄関がバーン!と乱暴に開き、その先に男が一人立っていた。
私の知人であり、彼女にストーカーまがいに付き纏っているカメラマンだった。
(つづく)
面白いっすねぇ。先生、早く(下)を!
ご声援、どうもありがとうございます! この「世界の名作シリーズ」は、かなり気合いを入れて書いているので、けっこう時間がかかってしまいます……完成し次第、すぐアップしますね。ブログ用語で「アップ」って間違ってます?(ゴ)