渡辺浩弐の日々是コージ中
第351回
2月24日「冬吹っ飛ぶ」
・春を探しに(というか虫採りに)山に行ったらいきなり信じられないほどの吹雪。ろくな準備もないまま閉じこめられる。ひー。なんとか戻ってきたら東京は突風で花粉激しく舞う状況。ひーひー。
2月25日「奇跡の詩人こっくりさん説」
・山小屋に『こっくりさんはなぜ当たるのか』(安斎育郎著)という本が置いてあって、読んでみたらとても面白かった。学者としての立場から、潜在意識そして予期意向の発露現象としてこっくりさんのことを解説しているものだが、最終章でこれがいきなり『奇跡の詩人』騒ぎについての分析になるのだ。
・『奇跡の詩人』についてご存知なければ検索してみて頂きたいのだが、脳障害の子供が、母親の手を借り文字盤の上にものすごいスピードで高度な文章を書いていく過程がNHKで特集されたものである。この現象を「こっくりさん」と関連させる解釈自体が、あの不思議な商売への容赦ない批判になっているのである。
・あの時の騒ぎは、今思えば、テレビのオカルト番組について、あるいはメディア時代の親子関係について、時代を先取りした問題提起だったのだ。
2月27日「しょこたんは名誉会員に?」
・中野ブロードウェイ商店会事務所に行く。そういえばまだ入会していなかったんだった。
・スタッフの方々がちょうど海外のテレビメディアに応対されているところだった。マスコミでは割と知られていることだが、ここの商店会は取材対応などとても親切で丁寧で、評判がいい。中野ブロードウェイは90年代以降、オタクの園としてのイメージもうまくプレゼンテーションしてきた。そのおかげで新しい成長を遂げてきたわけである。
・ところでしょこたんにはすごく感謝しているとのことである。彼女のおかげで一般層、特に女性客が来訪しやすい場所になった、という。そういえば最近はフィギュア系のお店が女性向けのドールもたくさん扱うようになったりと、微妙な変化が見受けられる。
第350回
2月15日「1984もはるか過去」
・高円寺にて、静かな神社を散歩してたら茂みの陰に監視カメラをめっけてぎょっとした。一歩外に出たらどこにいてもカメラの目を覚悟していなくてはならない時代なのである。窮屈な、と思う人もいるかもしれないが、全裸で外に出ちゃいけないのと同じようなことになっていくだろう。
・沖縄米兵の事件をきっかけに、街頭防犯カメラ設置についての論議がまた浮上している。監視カメラや監視社会に反対してると頭良さそうなのだが、実はそれが思考停止なんじゃないかと思う。少なくとも公共施設や繁華街に監視カメラを設置せずには、都市は立ちいかなくなっているのだ。
・100年後に、そういう社会になっていることは、間違いない。ならば理想論を振りかざすよりも、そういう空間で起こる事象をシミュレートし、予防策や対応策を考えておく、というのが正しいと思う。それも大急ぎで。
2月18日「話しかけてみる」
・中野のカフェやバーを回る。出来るだけ暇そうな時刻を見計らってカウンターに座り、店主にいろいろと話を聞く。こんなフレンドリーなことをするのは初めてである。
・人気店に共通していること。清潔好き(だから客がいない時でも忙しい)。コーヒーにこだわる(そういうところは他のものもおいしい)。地元のことを良く知っている(ただしぺらぺら喋ったりはしない)。
・それから余談だけど、蘊蓄を語りたがる客はものすごく嫌われるものなんですね。飲み屋で酒の、喫茶店でコーヒーの、メイドカフェでコスプレの話をするべきではないんだなあ。自重。
2月20日「死後のためのリゾート開発」
・神楽坂にて、TAGROさんと会う。日本酒を飲みつつ『2999年のゲーム・キッズ』の世界観について話し込む。
・講談社BOX版は、正式タイトル『2999年のゲーム・キッズ完全版DX』となった。全体を徹底的に書き直し、書き足している。いつの日か僕もその世界で暮らすのだ。手を抜けない。
・そしてTAGROさんは新境地を見せてくれるぞ。乞うご期待。
第349回
2月7日「PSP的なタイトル」
・担当して頂いている編集者のFさんは美人で仕事もばりばりできる独身キャリアウーマンだ。時々ものすごく大きな紙袋を持っている。いつ聞いても、服を買ったのだと答える。それも高級ブランドばかり。そして買った服は袖も通さないものが大半だ、という。それが異常なことだというのは自分でわかっているそうだ。
・こういう人にお薦めのソフトが『マイスタイリスト』(SCE/2月28日発売予定)。サンプル版でプレイさせてもらったが、現在なぜか成人女性層からの支持が厚いPSPのマーケット・イメージを正しく捉えた好企画だ。
・PSPにカメラを取り付けて、自分の服やバッグやアクセを全て写真で撮って入力してしまうのである。後は画面上で整理したり、いろいろ組み合わせてみてワードローブを考えたりするのだ。オートスタイリングのモードにすると、季節や会う人や行く場所に合わせて、手持ちのアイテムを合わせてのスタイリングを提案してくれたりする。
・とりあえずクロゼットはぐちゃぐちゃでもいいから、服をこのソフト上で整理する。ワードローブをストレスにせず、ゲームとして楽しむ。ウィッシュリストもあって、つまり雑誌に載ってる服を撮って、ワードローブの中に混ぜてしまう。さんざん試行錯誤してみて手持ちのアイテムとうまく組み合わせることができるということがわかった段階で、実際に買うのである。
2月9日「あと991年」
・講談社BOXから『2999年のゲーム・キッズ完全版』がリニューアル・リリースされることに(4月1日発売予定)。諸事情あり初版で打ち止めになっていた本で、中古品を1万円を超える価格で購入したなんてメールを頂いたりして申しわけなく思っていた。
・過去のショートショートはできるだけドワンゴやニワンゴのケータイ配信で読んでもらえるようにしているところなのだが、この本は掌編・短編・中篇含め1冊まとまって意味を成す設定もあるので、また本として、手に取っていただける機会を頂けたことは本当に嬉しい。いろいろな形で支持し復活に繋いで下さった方々に本当に本当に感謝。
・今回、TAGROさんがたくさんのイラストを描いて下さった。僕も新作を書き下ろした。10年ぶりに秘密の一つを明かすよ。これはTAGROさんに、ビジュアル化して頂いて載せる。
・作品について改めて。これを読めば、死んでも大丈夫になる、そんな本です。一度でもこの物語を脳細胞に刻み込めば、あなたは、この世界の中で永遠に暮らせるようになるわけです。
2月14日「面倒を楽しむ」
・自分の会社の登記を変更する手続き。飲食店の経営とか、物の販売とか、いろいろ資格や許諾を申請するにあたり、定款の事業目的の文案を変える必要があった。例えば古物商なんて、資格持ってないのに書いちゃうのってまずいと思っていたのだけど、定款目的に入ってないと申請ができないのである。
・いちいちお金もかかるし時間も取られるけど、こういう経験もいつか何かの役に立つかもしれない。何の役に立たなくても小説の栄養にはなる……と、いいなあ。