「君は素敵すぎる。これがラテンのノリか!」――46歳のバツイチおじさんはダンスフロアで恋に落ちた〈第33話〉
* * * * * * * * * * * * * * * * *
高校時代のバスケ部一年だったころ、夏合宿初日に俺たちは「インターバル」というダッシュ&ランニングを一時間以上繰り返すという地獄のような練習をしていた。中学時代に県の強豪校で鳴らし、自信満々で高校に入ってきた一年生のチームメイトは、そのあまりの練習の激しさにゲロを吐き、バタバタと倒れ、気を失った。目がさめると、また走る。誰もが逃げ出したいと思っていた。
そんな光景を見て、キャプテンの清太郎さんはこう叫んだ。
「一年、頑張れ!」
俺たちは答える元気さえなかった。
すると監督がチームメイトを集め、こう言った。
監督「お前ら、辞めたいなら辞めてもいいんだぞ。すぐに荷物をまとめて帰れ! でも、ここに残るんやったら――」
そして、声のボリュームをあげてこう続けた。
「やるし“こ”ないんだよ!」
監督、それ、「やるしかないんだよ!」の言い間違えやろ!
誰もが心の中で突っ込んだ。
だが言えない。
怖いから。
その後、練習が厳しく、誰かがくたばりそうになった時、俺たちはこう声を掛け合い気合を入れた。
「やるしこないんだ! 頑張れ!!」
その言葉は俺の、きっと俺たちチームメイトにとっても「座右の銘」となった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
心の中で何度もつぶやいた。
やるしかない。やるし(こ)ない。やるし(こ)ない。
「やるし“こ”ないんだよ。隆一郎(ごっつ本名)」
俺は断固たる覚悟を決めた。
俺「ガルシア、踊ろうか!」
ガルシア「行こ!」
俺たちはダンスフロアで向き合った。
南インドには珍しいアジア人とラテン女性のカップルは注目を集め、インド人が周りを囲った。
音楽はインド映画ボリウッドムービーのダンスシーンに流れるダンスミュージックだ。
俺はガルシアの目を見つめた。
ガルシアもまた美しい瞳で、俺を見つめた。
俺たちは強く見つめあった。
俺は曲に合わせ、軽くステップを踏んだ。
ガルシアもステップを踏んだ。
サンバかサルサかは知らないが、ラテンのステップだ。
映画『パルプフィクション』のワンシーン、ジョン・トラボルタとユマ・サーマンのダンスシーンのようなクールな始まりだ。
俺は少し激しくステップを踏んだ。
反応するかのようにガルシアもステップの速度を上げた。
周りのインド人は盛り上がった。
ガルシアはエロい感じで上半身を使い、セクシーに体をくねらせる。
俺もガルシアの動きに合わせ上半身をくねった。
俺が手を出すと、ガルシアはゆっくりと俺の手を握り、小気味よく回転した。
まるで時間が止まったようだった。
曲が転調すると、もう二人のダンスは誰にも止められなかった。
俺たちはダンスフロアを魅了した。
盛り上がるインド人たちは俺たちの単なる引き立て役に成り下がった。
一曲踊り終えると、ダンスフロアの至る所から拍手が飛び交った。
ガルシアを見て微笑むと、ガルシアもニコリと笑みをこぼした。
「最高だよ、ガルシア! 君は最高だ!!」
俺は一瞬で恋に落ちた。
ガルシアの瞳も少し潤んでいるように感じた。
フロアの中の彼女は誰よりも美しく輝いていて、男たちは彼女をうっとりと見つめていた。
俺「ガルシア、ダンス上手いね!」
ガルシア「ごっつも最高よ」
1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
記事一覧へ
記事一覧へ
この連載の前回記事
【関連キーワードから記事を探す】
なぜインドは「誰とも組まない」?ロシアとの武器取引から見える“世界第4位の軍事大国”の戦略
インド人が大切にする「水のような柔軟性」で売上2億円強。インド人CEOの仕事の流儀とは
「今も昔も“ボッタクリ”だらけ」旅の達人が驚いたインド旅行の“これがヤバい!”3選
「るりちゃんに触ってみたい」――46歳のバツイチおじさんはさらに大きな邪念を抱き“もうひとりの俺”と話し合った〈第41話〉
「ここは恋愛もSEXも禁止」――46歳のバツイチおじさんはヨガの総本山で煩悩とさらに戦い続けた〈第39話〉
堂々完結! 英語力ゼロだったバツイチおじさんが世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる本当の理由〈最終話〉
「やられた。財布が、ない!」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第43話〉
「やばいな、これ。ひょっとして俺、死ぬ?」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第42話〉
5分でわかる「バツイチおじさんの世界一周花嫁探しの旅」のフシギな魅力〈番外編〉
「るりちゃんに触ってみたい」――46歳のバツイチおじさんはさらに大きな邪念を抱き“もうひとりの俺”と話し合った〈第41話〉
関西ナンバーワン美女ダンサー集団GLAMOR DANCERSのSEXYダンス&チップ疑似体験動画を公開!
「君は素敵すぎる。これがラテンのノリか!」――46歳のバツイチおじさんはダンスフロアで恋に落ちた〈第33話〉
「夏先生が選ぶ子は必ず入れるように」素人集団だったAKB48、現場を一任された“育ての親”が覚悟を決めた瞬間
パリ五輪の新種目「ブレイキン」が凄い。“殴り合わないボクシング”で金メダルに期待
「歌って踊れるデブ」がそれだけでエンターテイメントになる理由
夏祭りでナンパ男と“楽しんだ”ギャル2人組。なぜか「3台のミニバンを乗り継いで」帰宅するまで
「彼女と僕はSEXする運命なわけです」地下アイドルを推す32歳・素人童貞の暴走
経験人数3000人超えのナンパ講師が教える、女性に断られても凹まない強メンタルの育て方
「君は素敵すぎる。これがラテンのノリか!」――46歳のバツイチおじさんはダンスフロアで恋に落ちた〈第33話〉
48歳で26歳の婚約者にフラれた男性。うつ状態から這い上がった方法とは
堂々完結! 英語力ゼロだったバツイチおじさんが世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる本当の理由〈最終話〉
「やられた。財布が、ない!」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第43話〉
「やばいな、これ。ひょっとして俺、死ぬ?」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第42話〉
5分でわかる「バツイチおじさんの世界一周花嫁探しの旅」のフシギな魅力〈番外編〉
「るりちゃんに触ってみたい」――46歳のバツイチおじさんはさらに大きな邪念を抱き“もうひとりの俺”と話し合った〈第41話〉
堂々完結! 英語力ゼロだったバツイチおじさんが世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる本当の理由〈最終話〉
「やられた。財布が、ない!」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第43話〉
「やばいな、これ。ひょっとして俺、死ぬ?」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第42話〉
「君は素敵すぎる。これがラテンのノリか!」――46歳のバツイチおじさんはダンスフロアで恋に落ちた〈第33話〉
「今夜、君に恋に落ちてしまいそうだぜ」――46歳のバツイチおじさんはクサすぎるセリフをさらりと口走った〈第32話〉
「俺はあの笑顔が好きだ。るりちゃんから笑いを取りたい」――46歳のバツイチおじさんはヒンドゥー教の聖地で大きな邪念を抱いた〈第40話〉
「ここは恋愛もSEXも禁止」――46歳のバツイチおじさんはヨガの総本山で煩悩とさらに戦い続けた〈第39話〉
「天真爛漫な南仏美人と清楚な日本美人、どちらを選べばいいのか?」――46歳のバツイチおじさんはヨガの総本山で煩悩にまみれた〈第38話〉
「俺、もしかして間違った場所に来ちゃった?」――46歳のバツイチおじさんはヨガの総本山で途方に暮れた〈第37話〉
「この感覚、初恋のときと同じだ」――46歳のバツイチおじさんは新たな出会いにビンビン感じた〈第36話〉
堂々完結! 英語力ゼロだったバツイチおじさんが世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる本当の理由〈最終話〉
「やられた。財布が、ない!」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第43話〉
「やばいな、これ。ひょっとして俺、死ぬ?」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第42話〉
5分でわかる「バツイチおじさんの世界一周花嫁探しの旅」のフシギな魅力〈番外編〉
「るりちゃんに触ってみたい」――46歳のバツイチおじさんはさらに大きな邪念を抱き“もうひとりの俺”と話し合った〈第41話〉
女性が「好意を抱いている男性」だけに実はしている“5つのさりげない言動”
「結婚したいけど、自分の生活は変えたくない男性」が幸せになる方法
「女性からなぜか嫌われない男性」が絶対にやっていない5つのこと
結局、「優しい人」はモテないワケ…女性が本当に求めている“男性の特徴”
「女性が確実に好意を抱く“男性の気配り”」に共通している5つの特徴
堂々完結! 英語力ゼロだったバツイチおじさんが世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる本当の理由〈最終話〉
「やられた。財布が、ない!」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第43話〉
「やばいな、これ。ひょっとして俺、死ぬ?」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第42話〉
5分でわかる「バツイチおじさんの世界一周花嫁探しの旅」のフシギな魅力〈番外編〉
「るりちゃんに触ってみたい」――46歳のバツイチおじさんはさらに大きな邪念を抱き“もうひとりの俺”と話し合った〈第41話〉
この記者は、他にもこんな記事を書いています